四国のど真ん中で食べた初ミリメシ

四国山地を横切る吉野川の激流によって創られたという大歩危(おおぼけ)・小歩危(こぼけ)渓谷は、四国有数の観光名所だが、この日は平日の火曜日、しかも寒さ厳しき真冬でもあるため、どこに行ってもほかの観光客にはほとんど会わなかった。

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徳島県の大歩危渓谷の絶景

雄大な渓谷を目の当たりにして「お〜」と小さな歓声を上げても、祖谷(いや)のかずら橋(サルナシなどの葛類を使って架けられた原始的な吊橋)を「ひ〜」と言いながら渡っても、振り返るとただ一人。

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祖谷のかずら橋。めちゃくちゃ怖い

この状況を、「なんて寂しい……」と嘆くようだったら、もともと車中泊の旅などしていない。
僕は日常生活では滅多に味わえないこの孤独感を楽しみ、むしろ心を洗われていた。

祖谷のかずら橋のほど近くにある祖谷ふれあい公園の静かな駐車場で、いよいよミリメシを食べてみることにした。

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ほかには誰もいない駐車場でミリメシのしたくを開始

非常用糧食にはいくつもの種類があるが、持っていた2種類の中から「煮込みハンバーグ」をピックアップした。
発熱剤に水を加え、温めること20分。
やがて、ほっかほかのミリメシが出来上がった。

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景色を眺めながら温める

レトルトのパッケージから出してみてまず驚いたのは、米の分量が多いことだ。
白飯のパックとドライカレーのパックがあり、それぞれ十分な量がある。
それを皿の上に出し、煮込みハンバーグを乗っけてみた。

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非常用糧食「煮込みハンバーグ」

眼下の渓谷から聞こえてくる川の流れにモバイルスピーカーで古いR&Bを混ぜ、真冬だというのに常緑樹の緑が爽やかな山々を見ながら「いただきます!」。

するとこれがまあ! 
意外と思えるほどの美味だったのだ。

“非常用糧食”という名前からイメージしていたのは、味など二の次でエネルギー補給を最優先した食糧だったが、味付けにも十分配慮された立派なご馳走である。
ネット情報によると、日本のミリメシのレベルの高さは昔から有名で、1990年代のカンボジアPKOの際、参加国で行われたミリメシコンテストで1位に選ばれたこともあるのだそうだ。

なるほどなるほど……。
これなら我が国も安全だ……。

などと一人で納得しつつパクパク。あっという間に完食してしまった。
念のため調べてみたら、非常用糧食1食あたりのカロリーは1000kcalほどらしい。
ダイエットにとって、たまのドカ食いはリバウンドの元凶だが、成人男性の1日の摂取カロリーの目安は一般的に2000kcalと言われているから、このくらいは全然大丈夫だろう。