子どもがおつかいで買ってくれる商品に
温かい商品を提供できるのは魅力だが、店にとっては負担となることも、苦労した理由のひとつだ。調理スタッフの人件費もかかる上、機材への投資や調理トレーニングが必要不可欠。
例えると、コンビニ運営に加えて弁当屋を始める状況と同じである。しかしながら、競合が持っていない商品を展開したいという思いを持ったフランチャイズオーナーが、ホットシェフにチャレンジしてくれた。
ホットシェフ併設店が増えていくと、相乗効果のように売上も伸びた。現在は、セイコーマート1170店のうち約900店に導入。「人気が目に見えるようになったのはここ10年のことのように感じます」と佐々木さんは言う。
一方、1995年、今も形を変えて存続しているカップアイス「北海道アイスクリーム バニラ」からオリジナル商品の歴史は始まった。開発の背景には、1990年代前半のイギリスでの状況があった。
「当時イギリスでは小売業が寡占化されていました。競争が激しく淘汰が進み、両手で数えられるくらいの企業でイギリス全土の食品小売の90%くらいを担っていたそうです。
その頃の日本はというと、チェーン店がようやく発達したもののまだまだ地域の店がけっこうありました。そんなイギリスの姿は日本の20年後の姿かもしれないと感じたと、当時の社員から聞いています」
日本でも限られた企業で食品マーケットの大多数を占めてしまう状況が訪れる可能性があることに危機感を感じ、リテールブランドの開発に力を注ぐことを決心。
「イギリスでは各チェーンのリテールブランドがたくさんあり、その商品で競争しています。我々も生き残っていくためには自身の商品をつくらなければならないと強く感じました」
イギリスへ社員を派遣し、造詣の深い現地の大学教授から講義を受けるなどして見聞を広めた。しかし、アイスクリームを皮切りにオリジナル商品を徐々に発売していったものの、期待通りには売れなかった。
転機になったのは1996年に牛乳の生産会社に資本参入し、自社ブランドの牛乳を自社工場で生産したことだ。
「牛乳は毎日飲まれるものなので、気に入っていただけると来店動機になる。子どもがおつかいに来て牛乳を買ってくれるようになったら、かなりファンがいると考えていい。
現在店舗の商品取扱数は3500品目くらいですが、売上ベスト3に牛乳が入っています。我々にとって重要な商品です」