“世界観”にお客さんが気づかなくてもいい
――テレビの存在感が弱まったことで、定期的に開催する単独ライブで食べていきたいという芸人も増えました。芸人を鍛える場として、単独ライブも大事ですか。
大事ですねえ。若手は1回でもやると大きな経験になります。たとえば漫才を6本作ったら、同じネタはできないから、違うネタのパターンを覚えるので。
――単独ライブは賞レースに向けて新ネタを試す場である一方、演劇のような世界観を求めているファンも多いですよね。
そこは人によりけりですね。個人的な感想としては、「世界観を押し出してもファンしか喜ばないじゃん。初見の人は笑えないだろ」なんですけど。演劇色が強くても否定はしませんよ。でも、曲を使って終盤に盛り上げてって……俺たちは芝居やってるわけじゃないんだし。何か引っかかるんですよ。
――得てして最後に各々のコントをつなげたり、伏線を回収したがりますよね。
そういう世界観の単独ライブが2000年代に増えたんです。「いや知らんがな」という思いもあって、ペナルティの単独はそのアンチテーゼを込めてネタを作成してましたね。
――ルミネで1年に1回やってましたね。
コントをいっぱい作って、5年間続けました。ペナルティの単独って、実は裏では設定をつなげているんですよ。このコントに出てくる子どもが成長したら、別のコントに出てくるあのキャラになるみたいな。ペナルティワールドの中では全部関係性があるんです。
――それは意外です。バカバカしいコントばかりで、ただ笑ってました。そこは気づいてほしいポイントなんですか?
お客さんは別に気づかなくてもよくて、作り手だけがわかっていればいいんです。ひとつひとつのコントで笑わせたらいい。ネタが強いか弱いか、そっちで勝負するほうが僕は好きなんで。
取材・文/鈴木工 編集/斎藤岬
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