「初のアラブ開催」が数々のドラマを演出

――各国サポーターの盛り上がりはいかがですか?

やっぱり「アラブの大会だな」というのはすごく感じています。カタールから陸続きのサウジアラビアや、比較的近いモロッコ・チュニジアのサポーターが非常に多く、アラブ圏の国の試合では、スタジアムも「アラブ側のホームゲーム」という雰囲気になっていますね。

反対に、ヨーロッパの国のサポーターはかなり少ない印象です。人権問題から「観戦をボイコットしよう」という動きもありますし、いつものW杯は6月開催でバカンスの時期ですが、今回は11月なので、それも要因の一つかもしれないですね。

あとは、「日本代表のユニフォームを着ている現地の人」がけっこう多かったです。ドイツ戦とスペイン戦で日本が勝ったことによって、「日本を応援しよう」という人がかなり増えた印象ですね。日本国旗を体に巻いて応援しに来ている現地の方もいました。

【日本代表の躍進にカタール人も日本ファンに!】ノンアルコール、冷房スタジアム、番狂わせ。初のアラブ開催W杯の魅力とは‗02
木崎伸也氏

――大会前から様々な問題も指摘されていた今大会ですが、現地の雰囲気はいかがですか?

人権問題やジェンダー問題で、ヨーロッパからは厳しく批判されていますが、その問題が今後どうなるかですね。もしかすると、批判的な論調がより激しくなる可能性もあるかもしれません。

ただ、そういう人権問題の部分を抜きにして考えると、取材して観戦する身としては、過去のW杯に比べてもかなり満足度が高い大会です。移動もものすごく楽ですし、食事も安くて美味しいですし。まだ大会の途中なので言い切るのは難しいですが、現段階では成功と言ってよいと思います。

サウジアラビアがアルゼンチン相手に大金星をあげたり、モロッコがベルギー、チュニジアがフランスを破るという“番狂わせ”が起きているのも、「アラブ開催のW杯」という側面が影響していると思うので、そのあたりも面白いな、と感じますね。


取材・文/佐藤麻水