編集からの要望はたった1度だけ
――完成した原稿を見て修正を出されることはありましたか?
それはなかったですね。さくら先生の文章は独特なので、僕がどうこういうところはなくて。書籍や各章のタイトルもさくら先生が考えられていましたが、どれも素晴らしいものばかり。
でもたったひとつだけ、修正をご相談したことがありました。それが『さくら日和』の書籍タイトルでした。
――『さくら日和』のあとがきにも書かれているタイトルのことでしょうか?
そうです(笑)。さくら先生はこのエッセイができあがったときに、タイトルを『おめでとう 新福さん』にしたいと提案されたんです。これには本当に驚きました。さくら先生はイタズラ好きだから「きっとこれはイタズラか何かだろう」と思ったんです。でも、ものすごく本気だった(笑)。ただ、僕としてもどうにかして別のタイトルに変えてもらいたかったので、さくら先生を何度も説得しました。
さくら先生は売れっ子の作家さんなので、新刊が出たら新聞広告を出すことになっていたんですね。そのタイトルが『おめでとう 新福さん』だったら大変ですよ(笑)。新福は珍しい名前なので、社内ではすぐ僕のことだと分かるだろうし、僕がさくら先生にお願いしたように感じる人もいるかもしれませんしね。そうは言ってもさくら先生もこれ以上ないくらいに本気だったので、何度説得しても粘られました。でも、それ以上に僕も粘りました(笑)。
――最終的には『さくら日和』になりましたが、どうやって説得されたのでしょうか?
僕がさくら先生に手紙を書いたんだと思います。もう何を書いたか覚えていませんが。その手紙を読んださくら先生が「しょうがないやつだなぁ」という内容のお返事をくださいました。