「勝てる」と信じていたアメリカとの決勝戦
アメリカチームとの試合は、オリンピックや世界選手権のような国際大会ではないとなかなか実現しません。日本やヨーロッパのバスケットボールシーズンは、秋に始まって2月から3月に終わります。シーズンが終了して4月ごろになると、代表に選ばれた選手たちは8月から9月にかけて開催されることの多い国際大会に向けて召集され、春から夏にかけて国際強化試合に臨むのが通常のパターンです。
ところが、アメリカのバスケシーズンは日本やヨーロッパと違って4月にスタートするため、レギュラーシーズンと重なり強化試合ができません。こうした事情も加わり、アメリカチームと対戦する機会は狭められています。さらに国際大会に参加したとしても、同じグループでなかったり、かつては日本がグループリーグを突破できないことも多かったりしたので、なおさら対戦機会は限られていたのです。それだけに、世界1位のアメリカチームとの対戦は日本にとって貴重なものでした。
そのアメリカとグループリーグで戦い、「勝てるかもしれない」と感じたのです。それほどまでに日本チームのコンディションは良好でした。決勝トーナメントが始まると、日本はベルギーと対戦します。第1クォーターを3点のリードで終えますが、第2クォーターで逆転され、第3クォーターで7点差に広げられました。しかし、最終の第4クォーターで日本チームは逆転に成功し、1点差でベルギーに勝利するのです。この時点で準決勝進出が決まります。
オリンピックの女子バスケで日本がベスト4に入るのは史上初のことでした。今でもこの試合は印象に残っています。次の相手は、グループリーグでも対戦したフランスでした。グループリーグでは僅差での勝利でしたが、準決勝では16点もの差をつけて勝てたのです。この時点で日本のチームのメダル獲得が決定し、日本はいよいよ決勝でアメリカと再び対峙することになります。
あのとき私たちは本気で「アメリカにも勝てる」と思っていました。それくらい自信に満ち溢れていたのです。ところが、いざ対戦してみると、アメリカはグループリーグのときとはがらりと異なり、ずば抜けたチーム力を発揮します。体力勝負になると日本が優位になるのがわかっていたのか、そうさせないように高さと技術力で得点を重ねていったのです。
結果的に日本は90対75でアメリカに負け、銀メダルに終わりました。
期待とは裏腹に、日本チームは負けてしまいましたが、リオ五輪の準々決勝で110対64という大差で敗退した状況に比べると、アメリカとの実力差はかなり縮まったのは明らかです。実に学ぶことの多いオリンピックでした。オリンピックの舞台でアメリカと2度にわたって対戦ができ、しかも決勝で戦ったという経験は、これからの日本チームにとって財産になることでしょう。「アメリカにも勝てる」という気持ちを絶やさずに1つひとつ課題をクリアしていけば、
次はアメリカに勝てると私たちは本気で信じています。
写真/アフロ