「ここで決めれば日本の歴史が変わる」

堂安は3年前の2019年、オランダ・エールディビジのPSVアイントホーフェンへ完全移籍したものの思うような結果を残せず、翌年にドイツ・ブンデスリーガのアルミニア・ビーレフェルトへ期限付き移籍。そこでチームを1部残留へと導く大活躍を演じ、たちまちドイツ中にその名をとどろかせた。

その後、東京五輪ではエースナンバー背番号10を背負って躍動するも、死闘の末に銅メダルを逃す屈辱を味わった。昨シーズンはPSVアイントホーフェンへ復帰し、シーズン2桁得点を記録。そのまま好調を維持し、今季開幕前に満を持してブンデスリーガへと舞い戻ってきた。

「ブンデス開幕戦でドイツ紙『キッカー』のベストイレブンに選ばれましたけど、驚きもうれしさもそこまでなかったし、シーズン2桁ゴールを獲れば人生が変わるとも思っていないです。人生を変えるようなサプライズって、別にひとつではないんですよ。

例えば、『ここで決めれば日本の歴史が変わる』というW杯の大事な場面でゴールを決めるとか、来季CL出場権のかかったリーグ最終戦でヒーローになって市場価格が上がるとか。そういう場面に居合わせる、という運も必要になってきます」

W杯の大事な場面で日本の歴史を変えるゴールを決める――。3か月前の時点で、堂安の目には “そういう場面”がハッキリと映っていたのだろう。ドイツ戦の3日前には「点取ります。それだけです」と言い残し、この大一番で3年10か月ぶりとなる代表弾をゴールネットに突き刺した。

「この2年で精神的に大きく成長できたと思っているし、何事にも動じなくなりました。人生を変えるサプライズを起こす環境は整っているし、そういう運が必ず巡ってくると確信しています」

積み重ねてきた努力を確固たる自信に変えて挑んだ夢の舞台で、自ら運をたぐり寄せ、人生を変えるサプライズを起こした堂安。有言実行の“持っている男”が、日本代表を新しい景色へと導いていく。

写真/Getty Images