ほとんどの料理にチーズが使われているレストラン
イタリアンレストランやビストロは数あれど、チーズセラーがある店はそうそうない。私が知っているのは「スブリデオ レストラーレ」だけだ。住所は長谷、最寄駅は江ノ電の由比ヶ浜。由比ヶ浜駅から歩いて3分ほどの私道沿いにある。チーズに焦点をあてたレストランだ。
たいていのメニューにチーズが使われている。自家製のパテの中にはコンテチーズが入っていたり、フレッシュハーブサラダは別注でブルーチーズや羊の乳のチーズなどハード系のものをかけてくれたり。デザートのメニューも然りで、ティラミスのザバイオーネクリームにマスカルポーネ、チョコレートムースにスティルトンが使われている。
チーズが主役のものからチーズが隠し味になっているものまで、そのグラデーションはあざやかだ。食べ歩き好きの友人を誘った時、「ほとんどの料理にチーズ」と聞いて、内心、全部似たような味になるのではないかと不安だったという。
しかし、そんな心配は無用、彼女は帰る前にしっかり自分の予約を取っていた。一つ決まったテーマがあると、逆に変化を楽しめるのではないだろうか。
元々は恵比寿の人気店だった。オーナーでもある吉田シェフが恵比寿の物件を手放すことになり、以前から愛着のあった鎌倉に移転を決めたそう。
移転後、鎌倉らしいメニューをと考案したのが「螺髪(らほつ)」。螺髪とは大仏のあの特徴的な縮毛のことで、チーズと玉ねぎでそれを表現した一皿だ。
じっくりオーブンでローストした玉葱にロックフォールと竹炭のソースがたっぷりとかかっている。とろりとした食感、白と灰色が合わさった幻想的な色彩(私は灰色が大好きなので、食べる前から気に入ってしまった)、ロックフォールの塩気と玉葱の甘さが溶け合った味わい、印象深い一皿である。
そんなオリジナリティ溢れるメニューも楽しいけれど、初めてここを訪れたのなら、ぜひ食べてほしいのが「ラクレット」だ。
専用のラクレットマシーンがあって、私は頼む度に勝手を言ってそれをテーブル近くに持ってきてもらう。柔らかそうだったチーズが香ばしくなっていく様を見ながらワインを飲むのが大好きだ。
時間をアテに味わう酒はどうしてこんなにおいしいのだろう。