煙たがられる職業と予測できた

インティマシー・コーディネーターになるには、専門機関による75時間におよぶオンラインレッスンやワークショップを受け、資格を取得することが必要だ。40代半ば、しかも子育てをしながら、それができるのか。自分が仕事を全うできるのか、不安があったという。

「一番の不安要素は、この職業が、現場で確実に煙たがられることが予測できたことです。欧米には何事も同意を取って契約書を交わす文化がありますが、日本には、そういったことが苦手な国民性がある。さらに、みんな『監督が一番偉い』と思っている現場で、何か意見を言うと、監督に物申すように見られるだろうなと思いました。

それでもやろうと決意したのは、業界で働く人の手助けにつながると思ったからです。
今年、映画業界で性加害の問題が取り沙汰されましたが、それ以外にもブラックなところがあって、長時間労働、低賃金、パワハラなどいろんな問題がある。私がこの職業に就くことで、少なくとも俳優の尊厳を守ることができるなら、意味のある挑戦になると思いました」

こうして資格を得た浅田さん。実際に仕事を始めて苦労したのは、やはり「煙たがられること」だった。

「どんな職業、どんな業界でも、新規参入って難しいと思うんです。特に日本には、慣れ親しんだやり方が一番いいと思っている世代の方たちがいるので、考えを改めてもらうのは、本当に大変。監督以外のスタッフも、私が入ることで打ち合わせや確認作業が増えるので、現場の反応は、必ずしもポジティブなものばかりではなかったです」

それでも道を切り拓き、今では過激な配信作品だけでなく、地上波のドラマ現場にも呼ばれるようになった。