ずっと残したい文字があるなら、「手書にしとき!」
――台湾でも! 大きく字を書く時と、さっき書いた文字ぐらいのサイズと、どっちが難しいんですか?
それは小さい方が難しいですね。
――文字を書く時は最初に文字のバランスが頭の中に浮かぶ感じなんですか?
それがようわからんのです。それがわかれば本でも出せるんですけど(笑)『なんでそないなってんの?』って言われても説明ができないんですよ。
――毎日書き続けてきた修行の成果というか、感覚なんでしょうね。
まあね。でも、ゆうても機械でできてまうことなんですよね。ただ、書いたものは書いたものにしかない雰囲気があってええんやけどね。機械は便利やけど、どの看板も一緒やから、町が均一的になるでしょう。
――書き文字のお仕事は日常的にあるものですか?
30年以上前からやってるんでここの近所の人は『字、書かなあかんってなったらあいつおるわ』って思てくれてて、今日も昼からお稲荷さんの柱に『令和何年』って書いたりとかね。
――手書き文字が必要とされる場はこれからもあり続ける気がします。
――ちなみに上林さんがファンの方に「サインください!」って頼まれたらどんな文字を書きますか?
いや、普通に名前書くだけやね(笑)
――上林さんは、機械で切り出した文字で作った看板について「便利やけど、15年経つとボロボロになってきたりすんねん」と言っていた、その逆で「書いた文字は15年経つと味が出てくるんよね」という。
町の古い看板って味があるでしょう。あれはやっぱり誰かが丁寧に書いたからなんですよ。だからこれからもずっと残したい看板なんやったら『手書にしとき」って言いたいところはあるね」と語る上林さんの姿がなんともかっこよかった。
ちなみに「サインズシュウ」の上林さんは頻繁にアップしている作業動画はTwitterアカウントでチェックするのが便利。また、上林さんの作品が「鏡広告」として掲示されている「千鳥温泉」もユニークな銭湯なのでぜひチェックしてみてください。
取材・文・撮影/スズキナオ