7 コーヴァリス
増尾 好秋
⑦は日本のジャズ・ギターの第一人者、増尾好秋の軽快なインストゥルメンタル・ナンバー。晴れた日のドライブに最適の伴奏曲だと、ずっと思っていた。印象的なフルートは渡辺貞夫。それとユニゾンでメロディ・ラインを弾くベースは❝チンさん❞こと鈴木良雄。70年代のいわゆる「和ジャズ」には名曲・名演がいっぱいある。
8 Quizas, Quizas, Quizas
Laura Fygi
⑧はキューバの古い歌謡曲。スペイン語の「Quizas」は英語だと「Perhaps」の意味。恋人に何を聞いても「たぶん、たぶん、たぶん」としか答えが返ってこない、という歌詞です。歌手のローラ・フィジィはよく知らない人だが、カヴァーを聞き比べたら、この人が一番よかった。
9 Bamboo
Mike Mainieri
⑨はジャズ・ヴィブラフォン奏者、マイク・マイニエリが80年代初めに発表したフージョン期の一曲。ブリヂストン・タイヤのテレビCFに使われたので、憶えている人もいるだろう。歳がばれるが。
10 Thorn of a White Rose
Elvin Jones
⑩はジャズ・ドラマー、エルヴィン・ジョーンズ名義だが、実質はキーボードを担当したヤン・ハマーのリーダー作と言って差し支えないと思う。’75年の作品『On the Mountain』の1曲目で、ジェフ・ベックはこれを聴いて衝撃を受け、’76年の『Wired』のセッションにハマーを招いたにちがいないと、当時リアルタイムで聴いたわたし(高校生でしたよ)は確信している。
11 I Want You
Gary Burton and Friends Near, Friends Far
⑪はボブ・ディランの曲をジャズのゲイリー・バートンがカヴァーしたもの。ディランのカヴァーは数あれど、わたしはこれが一番好き。ホーン・アレンジも楽しく、おじさんでもスキップしたくなる。
12 Compare to What-Live at Montreux Jazz Festival
Les McCann, Eddie Harris
⑫はレス・マッキャンが弾いて歌って説教するゴスペル・ソウル・ジャズの大名曲。「お前さんはいったい何と比較して、それをリアルにしようと企んでいるんだ?」とみんなが叱られる。マーティン・スコセッシ監督の『カジノ』でもこのナンバーが挿入曲として使われていて、映画館でしびれた記憶がありますな。
13 Medley: In the Garden/You Send Me/Real Real Gone/Allegheny-Live
ヴァン・モリソン
⑬はヴァン・モリソンの素晴らし過ぎるライヴ盤『A Night In San Francisco』から、ハイライトのメドレー・ナンバーを。「no guru, no method, no teacher」とモリソン御大が吠えまくる。わたしも基本的には、グルも、メソッドも、先生も必要としない人間なんだと思う。我流が性にあっている。
14 Looking Up
Michel Petrucciani
⑭はペトルチアーニの代表曲。この美しいピアノの調べを聴きながら、映画のエンドロールのように本を閉じていただければ幸いかと存じます。
以上、約90分。昔のLPレコードならぎりぎり二枚組。最初にリストアップしたときは軽く2時間を超え、これでは読者に相手にしてもらえないと思い、絞りに絞った結果である。とくに作品内でのシーンは説明しないが、もし『リバー』を読んでいただけたのなら、このサウンドトラックを聴いて、「あの場面の曲かな」と想像していただけるとうれしい。お付き合いいただき、ただ感謝。
「小説すばる」2022年10月号転載
『リバー』 Original Soundtrack Spotifyプレイリスト
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