子どもを守ることと、体の大切さを教えることは別

――しかし現在、「水着で隠れる部分は勝手に見たり触れたりしてはいけない」という指導が日本ではされていますよね。その観点から見ると、このトイレのシステムはどうなのだろうと思ってしまいます…。

「いわゆるプライベートパーツですよね。先ほども話したとおり、ほかの園児や外部からはトイレの中は見えないように工夫されていたり、実際に用を足している最中は外で待っていなければならないというルールがあったりします。
この場面では、子どもの安全を守ることと、子どもを尊重するのは別の話として考えなければいけないかもしれませんね」

――なるほど。確かにちょっと混同してしまいました。

「もちろん、そういう体を大事にするという趣旨の話は、日常の中で行われていますよ。保育園で保育士からも伝えるし、家庭でも子どもが興味をもったときに大人がしっかりと説明します」

――ちなみに、プライベートパーツについても保育園で教えるのですか?

「教え方のマニュアルが決まっているわけではありませんが、体のことについては保育園でも教えます。

そもそも、プライベートパーツやプライベートゾーンという言葉を使っていない国もあるんです。オーストラリアでは、どの体の部位もその人にとって大切なものだと説明します。
プライベートパーツは、勝手に自分や他人の体を見たり触ったりはしてはいけない、写真を撮ってはいけない部位のこと、という説明がされますよね。でもこれって、実は全身に当てはまる話ですよね。水着が隠れるところに限った話ではありません。
肩や髪を触れられて嫌な気持ちになることだってあるし、脚だけ写真を撮られたら気持ち悪いですよね。顔をジロジロと見られるのも嫌じゃないですか?」

――言われてみれば、肩や頭に触れてもセクハラにはなり得ますもんね。

「そうそう。難しい言葉で区切らず、一人一人の体はとても大切で、勝手に触れたりジロジロと見たりするのはよくないよ、と教えればいいんです。

トイレの話から脱線してしまいましたね(笑)。
以上のような意図があって、オーストラリアの保育園のトイレはかなり開放的になっています。最初はギョッとするかもしれませんが、子どもと教師を守るための工夫と配慮が詰まった設計ということですね」

オーストラリアの保育園の「びっくりトイレ事情」から見えるのは、何よりも子どもの体を大切にすると同時に、教育に携わる者を守ろうとする高い意識だった。

後編では、オーストラリアの性教育事情と日本の課題についてうかがう。

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※2022/9/29に記事の内容を一部変更いたしました。

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>>>コンドームは子どもたちの遊び道具!? 驚くべきオーストラリアの性教育事情