WEリーグの成功には何が必要か?

「女子サッカー・スポーツを通じて、夢や生き方の多様性にあふれ、一人ひとりが輝く社会の実現・発展に貢献する」

WEリーグには、この崇高な理念がある。それを実現するために、まず大切なことは競技のレベルが上がり、選手が輝くことだ。それがなければ、「世界一アクティブな女性コミュニティ」は絵に描いたモチになってしまうだろう。

現状、日本にはプロで指導できるS級ライセンスを持つ女性監督が10人前後しかいない。WEリーグで指揮を執ることができる「A-proライセンス」保持者を含めても25人前後にとどまる。一方、男性のS級保持者は500人以上いる。

女性指導者を育て、増やしていくことは不可欠だが、競技力向上のためには、性別に関係なく力のある指導者が必要だ。だからこそ、これまでのようにJリーグから指導者を迎える流れを断ち切ってほしくはない。

ただ、シーズンが変わったことで契約期間にズレが生じ、JリーグからWEリーグに指導者が来るためのハードルは上がった。ここにも秋春制移行の影響がうかがえる。

WEリーグの成功には、何が必要なのだろうか?

第一に、限られた予算の中でも現場の声をしっかりと吸い上げて反映させていくスピード感が欲しい。公式サイトはスタイリッシュだが、迫力のある試合レポートや公式記録、選手のプレーデータなどが掲載されておらず、リーグの魅力を伝える機能を果たしているとはいえない。ファンのそうした声に応えていくマンパワーも求められる。

選手会にも期待したい。

アメリカでは女子代表が男子と同水準の報酬を求めて訴訟を起こし、最終的に米サッカー連盟が総額2400万ドル(およそ27億6000万円)を支払うことで和解した。これは女子代表人気が男子代表を凌ぐアメリカならではだが、同国の選手たちはハラスメント問題や人種問題にも自主的に声を上げている。選手会の動きが活発なスペインは、クラブも代表もレベルアップを続け、国際舞台での存在感を強めている。

2011年当時、日本代表はほとんどの選手がアマチュアだったが、彼女たちは海外挑戦をしたり、より良いプレー環境を求めて行動することで、W杯で優勝した。

WEリーグ発足によって実現したプロ化は、「与えられた」ものかもしれない。それでも、世界の女子サッカーが急速に発展している現状を鑑みれば、プロ化は待ったなしだった。WEリーグを国際的な競争力のあるリーグに根気強く育てていけば、世界の頂点を目指せる日は再び巡ってくる。

1年目の教訓をもとにWEリーグは今後どう向き合っていくのか。後半戦の熱い戦いとともに、見守っていきたい。

写真/AFLO