繋がらないピラミッド

秋春制への移行で浮き彫りになったもう一つの課題は、代表やなでしこリーグなど、他カテゴリーとの兼ね合いだ。代表活動中は公式戦が中断される。そして、なでしこリーグは3月開幕の春秋制のまま行われている。つまり両リーグ間でのチームの昇格や降格はなく、ピラミッドは繋がっていない。

昨年12月末の皇后杯で起きた番狂わせは、その難しさを象徴していた。
 
11月末に代表が欧州遠征を行った際、選手たちは帰国後2週間の隔離を余儀なくされ、WEリーグの試合が延期になった。そのため、各チームは公式戦が1カ月間ない状況で皇后杯に臨んだ。

そんな中、日テレ・東京ヴェルディベレーザの下部組織で中高生主体のメニーナと、平均年齢19歳のセレッソ大阪堺レディース(なでしこリーグ)がプロチームを2度も撃破してベスト4に進出し、大きな話題をさらったのだ。

両チームは春先から公式戦を重ねてコンディションを上げ、トーナメントを勝ち上がってきた。高い戦術眼や身体能力、スキルを兼ね備えた新世代の台頭は育成の未来を示したが、その一方で、産声を上げたばかりのWEリーグに厳しい現実を突きつけた。

ジャイアントキリングは皇后杯の見どころの一つだが、今大会で顕在化した日程の不公平感は解消してほしい。WEリーグの野仲賢勝専務理事は、「チーム数(を増やす)の議論とともに、WEリーグをなでしこリーグと繋げていくのかどうかも検討しています」(メディア向けブリーフィング)と語っている。

皇后杯は最終的に、浦和と千葉がファイナルに進出してプロの意地を見せた。だが、アジアカップとの兼ね合いで、準決勝から決勝まで1カ月半以上も空く異例のレギュレーションになり、その空白期間も、世間の関心を低下させた。

国内リーグのレベルアップと代表強化がプロ化の目的だったはずだが、シーズン移行はマイナス面ばかりが目立つ結果になっている。「WEリーグがJリーグの秋春制導入のためのテストケースになっているのでは?」という声も聞こえてくるほどだ。