Jリーガーの自宅にサポーターが押し寄せる

これに関連して言うならば、例えばJリーガーの場合、住所バレが深刻な被害を生むことが予想される。

まず大前提として、Jリーグ関係者(選手、監督、スタッフなど)の大半は個人事業主のため、インボイス問題の当事者である上に、若手、J2・J3の大部分は年収1000万円以下のためインボイスによる実質的増税で年間1割程度(消費税相当分)の収入減が見込まれる。

さらに、現役Jリーガーの「屋号」登録は一般的ではないことを踏まえると、クラブ側は選手の「登録番号」を特定するために「事務所所在地」の追加公開を求めることが予想される。

一握りの有名選手を除いて個人の事務所などを持っていないため、代わりに自宅住所を登録せざるを得ない。つまり「氏名」と「事務所所在地」(=自宅住所)がセットで公開される可能性が高い。そうなれば、ざっと考えただけでも以下のような被害が予想できる。

・試合でミスした後、熱狂的な一部サポーターが自宅に押し寄せる
・試合や遠征時に自宅が空き巣や強盗に狙われやすくなる
・代表クラスなど人気選手の場合、熱狂的な一部サポーターやストーカーが自宅まで付きまとう

例としてJリーガーを挙げたが、このようにインボイスは、収入減少だけでなく生活の安全すらも脅かす制度と言える。

そもそも、なぜインボイス制度は個人事業主の本名バレ・住所バレに繋がる制度設計になっているのか。その答えはズバリ、「個人のプライバシーよりも大企業の利便性を優先したから」である。この事実が明らかになった、2022年8月8日の財務省の衝撃の答弁については、財務省が衝撃の回答。“本名バレ”不可避でもインボイス制度を導入する「本当の理由」で具体的に紹介する。


文/犬飼淳

財務省が衝撃の回答。“本名バレ”不可避でもインボイス制度を導入する「本当の理由」 はこちら