またしても後出しの参加条件が…
しかし、先ほどの官邸報道室からのメールに添付されていた参加申込書を開いたところで、早くも落とし穴に気づく。
なんと、先ほどの事前登録申込書と記入項目が瓜二つ。注目すべきは、署名記事を記入する欄も同じであることだ。これが意味するところは、「直近3ヶ月以内に協会加盟社が発行する定期的刊行物に総理や官邸の動向を報道する署名記事を各月1つ以上掲載」という厳しい条件は、事前登録時の1回のみではなく、毎回の会見への参加申込時に常に満たす必要があるということだ。
要は、総理大臣会見に参加したければ未来永劫、毎月1本は、総理や官邸の動向を報道する署名記事を、定期的刊行物に掲載しなくてはならないのだ。
繰り返すが、これが取材機会自体が限定されているフリーランス記者にとっては参加資格を維持するだけでも非常にハードルが高い。
ここまで厳しい条件を毎回の参加申込時にも課す必要性はあるのか官邸報道室にすぐさま問い合わせたところ、当日中に以下の回答が返ってきた。
フリーランス記者の総理大臣記者会見の参加条件が「㈳日本新聞協会加盟社が発行する媒体に署名記事等を提供し、十分な活動実績・実態を有する者」となっております。総理大臣記者会見の開催時点で十分な活動実績・実態を有しているかの確認のため、毎回提出いただく必要があります。
出典:官邸報道室から筆者へのメールを一部抜粋(2022年8月9日 17:01発信)
簡単に書いてくれているが、私はこの条件は「事前登録」の際に必要とは聞いていたが、「毎回の会見への参加申込時」も常に満たす必要があることはこの時に初めて知った。前回記事でも指摘した通り、官邸報道室の「いかにしてフリーランス記者の参加ハードルを高くするか」に腐心する姿勢は終始一貫している。具体的には以下だ。
・参加条件に関する情報は極力一般には公開しない(電話やメールでやり取りを重ねると隠された条件が次々と明らかになる、等)
・参加条件をこっそりと伝える(メール本文ではなく添付ファイルの文言のみに条件を記載する、等)
・こちらの解釈を明記しただけでは、その正誤について回答しない。答えざるを得ないほどピンポイントに質問(「この理解で正しいか?」等)した段階でようやく回答する
3ヶ月以上にわたって粘り強く対応してきたが、率直に言って、このタイミングで私は心が折れそうになってしまった。せっかく苦労して事前登録に成功したばかりだが、一度も会見には参加できないまま参加資格を失うことも十分にあり得るだろうと半ば覚悟した。
しかし、幸いなことにこの心配は杞憂に終わる。この出来事からわずか24時間後、私は総理会見に参加していたのだ。翌日(8月10日)にいったい何が起きたのかはまた別の記事で詳しくお伝えしていきたい。
文/犬飼淳 写真/小川裕夫