NWSLで確固たる存在となった川澄奈穂美と永里優季
シカゴでは、永里が所属するシカゴ・レッドスターズがホームで、川澄と横山が所属するゴッサムFCと対戦。シカゴのコーチングスタッフには、東京五輪でなでしこジャパンのコーチを務めた今泉守正氏も名を連ねている。
この日の観客は5,078人。ポートランドに比べれば少ないが、メインスタンドの盛り上がりはソーンズに引けをとらなかった。こちらは子供の数が多く、クラブのマスコットが試合中にベンチに乱入して子供たちを喜ばせたり、スタンドにウェーブが起こったりと、客層に合わせて観戦を楽しむ様々な工夫が見られた。
川澄は、NWSLで日本人初の100試合出場を達成するなど、第一線でエネルギッシュなプレーを続けている。永里は欧州と日本、アメリカなど5か国でプレーし、海外生活は12シーズン目に突入。ピッチ上での佇まいも、外国人選手と見間違うほど完全に溶け込んでいた。
試合は、シカゴが前半と後半に1点ずつを決めて2−0で勝利した。ゴッサムFCは、2点のリードを許した67分に川澄を投入。左サイドで周囲に大きな声と手振りを交えて指示を伝え、チームはにわかに緊張感を取り戻した。
だが結局、決定機をほとんど作れないままゲームセット。川澄は悔しい表情だったが、試合後はピッチ上で永里と健闘を称え合った。
それぞれのチームでリスペクトされ、確固たる居場所を築いた2人は、WEリーグもよくチェックしているようだ。「YouTubeなどでほとんどの試合を見ている」という川澄は、WEリーグを盛り上げるための考えを、積極的に発信してもいる。
「アメリカは、スタッフの数が違います。主務やマーケティング、SNS担当や試合のレポートを書く人など、日本は一人のスタッフが兼任することも多いと思いますが、NWSLはそれぞれが専門職で、役割が明確です。そういう『人』への投資も惜しまない印象がありますね。
投資といえば、インスタの広告にチームの宣伝が出てくることもあって、『そんなところにも広告を出しているんだな』と。選手やチームをカッコ良く見せることでお客さんが増えればさらに良くなっていくとわかっているから、それも必要経費として予算を組んでいるのでしょう。
お客さんに来てもらうためには、試合の開始時間も大事ですね。NWSLの客層はサッカーをしている女の子たちも多いので、キックオフは夕方や夜が多いです。WEリーグの試合はお昼スタートが多いので、(女の子たちの)試合時間と重なってしまうんですよね」
川澄が言うように、少女たちがスタジアムに来やすい環境を作ることは、WEリーグにとって非常に重要だ。なぜ、夜に試合をできないのか――。ナイトゲームは照明の経費がかかることも、各クラブの負担になっていると聞いた。
また、秋春制(NWSLは春秋制)になったこともハードルを高くしている。真冬のナイトゲームは、観客もプレーする選手にとってもリスクが大きいからだ。予算を増やすか、シーズンを春秋制に戻すか、あるいは他のアイデアを捻り出すか。まだまだ議論の余地はありそうだ。