そして、新たな連載がスタート

森鴎外の言葉を借りていうならば、『夢幻の如く』や『天地を喰らう』などの作品は、作者の想像力によって飛躍した「歴史離れ」の物語。いっぽう本宮氏には、史実に基づいた「歴史其儘(そのまま)」に寄った作品もある。

『猛き黄金の国』(1990)もそのひとつで、主人公は岩崎弥太郎。土佐藩の地下浪人(郷士の株を売ってしまった武士)出身で、幕末に頭角を現し、明治になって三菱財閥を築いた人物だ。彼は「志士」たちがイデオロギーに熱狂した時代に、あくまで自分の「根」を見失うことなく、大きな実りを成した。このマンガはそうした弥太郎の物語であるのと同時に、「経済」という地に足のついたリアリズムから見た幕末史、明治維新史でもある。

漫画家・本宮ひろ志のベスト歴史マンガを探る_06
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『猛き黄金の国』シリーズでは、その後も伊能忠敬や二宮金次郎といった人物が描かれ、読者としてありがたいことに、現在も新作が発表されている。2022年7月より『グランドジャンプ』にて、明治の経済人である由利公正の物語がはじまった。

その数々の作品をふり返り、与えた影響の大きさを考えると、圧倒される思いだ。歴史に向き合い、ときには巨大なスケールで飛躍する。本宮氏の作品は、きっとこれからも僕ら読者を、想像を超えた世界に連れていってくれることだろう。

文/堀田純司 

©本宮ひろ志/サード・ライン
©本宮ひろ志/集英社

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