ビジネスマン必読のマンガ

サラリーマン経験者であれば、いや、もちろん経験者に限らず、1994年『週刊ヤングジャンプ』で連載がはじめられた『サラリーマン金太郎』に思い入れがある人も多いだろう。

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この作品の主人公は矢島金太郎。彼はもともと一万人ものメンバーを持つ暴走族・八州連合のリーダーだった。しかし引退して漁師をやっていたところ、「会長の命を救った縁でヤマト建設に入社した」という異色の経歴を持つ。

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命のやりとりに生きる政財界の世界の大物さえ認める、肝っ玉の持ち主。いくつになってもケンカも辞さないところは昔のままで、自分の道を曲げない人物だが、決してガンコなだけではなく、人の教えを受け入れる素直さがある。

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金太郎の最大の魅力は、ほれぼれするほど気持ちのいい笑顔であり、そうした彼がどこか感じさせる「かわいげ」が(「かわいさ」ではない)、出会った大物たちだけではなく、敵までも味方にしていく。

『赤龍王』(1986)の劉邦も実にいい顔で笑う男だったが、「見ていて気分のいい男は、大物になる」。それは本宮氏のぶれない「人間観」だと感じさせられる。

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このことは、初連載の『男一匹ガキ大将』の時代から変わっていないようだ。『男一匹ガキ大将』の主人公は戸川万吉。彼もまた中学生ながら1000人もの子分を持つ番長であり、ただ度胸が据わって腕っぷしが強いだけではなく、出会った大人社会の大物でさえも味方にできる器を持っていた。また金太郎と同じように、ビジネスセンスも豊かで、経済を見る眼も持っていた。

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違うのはおそらく時代背景で、万吉のころは、「いい学校を出てサラリーマンになれば、一生安泰」というストーリーが現役バリバリで機能していた。そうした世の中で彼は日本のアウトサイダーを束ねるリーダーとなっていく。

一方、金太郎はバブル崩壊後の90年代に入社する。官僚も、政治も、日本社会そのものがストーリーを見失った「失われた時代」に彼はサラリーマンとして生き、成長し、道を切り拓いていく。

『サラリーマン金太郎』も、約50年前の作品である『男一匹ガキ大将』も、ひとたび開いてしまうとそのままグイグイひきこまれて、読むのが止まらなくなるのだからスゴイ。