「よく買うもの」の物価上昇率は5%超え

日米の長期金利(10年物国債利回り)の格差は3%以上に拡大した。低金利の円を売って高金利のドルを買うのは、市場の原理からいえば当然の行動といえるだろう。資源の乏しい日本は価格が高騰するエネルギー、食糧などを輸入するために、より多くの円をドルに替えなくてはならない。その結果、円はさらに安くなる。

この円安スパイラルがインフレ圧力となることは避けられない。6月の日本の消費者物価上昇率は2.2%。これで3ヶ月連続の2%超となった。米欧と比較すれば低いようだが、企業物価指数(企業間取引物価)上昇率は6月9.2%で、調査を開始した1960年以降でもっとも高くなった。この12ヶ月間で見ても、企業物価指数は連続で5%超上がっている。

消費者物価の上昇が欧米より穏やかに見えるのは、消費が伸び悩み、企業が増加したコストを価格に転嫁できずにいるからにすぎない。企業が価上昇コストを背負えば、賃金は抑制され、消費増大の頭を抑えつけることになる。

日本の物価上昇の特徴は「二極化」だ。「よく買うもの」ほどインフレ率が大きく、「まれにしか買わないもの」の値上げ幅は小さい。5月の物価上昇率は2.5%だったが、物価算定対象582品目のうち、年間購入回数が15回を超える品目は5%を超える一方で、年間0.5回未満の品目は1.7%だった(日本経済新聞6月25日付け記事より)。

この双方の品目をならして2.5%だということだ。つまり、私たちは生活実感としては2倍の物価高に直面している。

さらにモノとサービスの物価二極化も日本のインフレの特徴だ。7月23日付日本経済新聞によれば、6月の消費者物価のうち食品などのモノが前年同期比4.9%上がり、運輸や娯楽などサービスは逆に0.3%下がっている。

サービス価格が低迷するのは需要が鈍く、賃金が伸び悩んでいるせいだ。また、サービス部門は輸入物価上昇の影響が小さいということも要因となっている。

このように、日本経済はデフレ構造を脱却できないまま、円安インフレに襲われていると見るべきなのだろう。6月の実質賃金(名目賃金上昇率から物価変動の影響を除いた数値)は前年同期比でマイナス0.4%だった。これで減少は3ヶ月連続だ。