1975年、白熱のマスターズが「エミー賞」を受賞
テレビ中継に関して、チャーキニアンが意識して実践した特徴的なことにスピード感があります。ゴルフってだらだら見ているとかったるくなるんです。ところが、チャーキニアンの中継はスイッチング(画面の切り替え)が早くて、飽きない。
象徴的な話があって、ある年、人気のゴルフ解説者であるボブ・トスキが16番ホール(池越えのパー3で見どころ満載)の解説をしていたら、「お前の話は長い。もうやめろ!」と平気で画面を変えてしまったと。
のちに、チャーキニアンはゴルフの普及に貢献したと世界ゴルフ殿堂入りしています。先日、タイガー・ウッズが記念式典で涙を流した、あの世界ゴルフ殿堂です。
マスターズはそういう演出も含めて、現場にいるパトロンのみならずテレビを通して見ている観客に、いかに魅力的に見せるかに、なみなみならぬこだわりがある。
1975年のマスターズ中継は、テレビ界のアカデミー賞ともいわれるエミー賞を受賞しています。ゴルフトーナメントの中継が受賞するなんて、おそらく最初で最後(⁉︎)でしょう。同年の大会に優勝したのはニクラウスで、トム・ワイスコフ、ジョニー・ミラーと大接戦を演じて、ニクラスが16番パー3で10mのパットをねじ込んで飛び跳ねたというドラマチックな試合でした。
オーガスタ・ナショナルGCは、ジョーンズが気の合った仲間を招くためにつくった、最高のホスピタリティーを備えたプライベートコースです。各ホールにあしらわれた草花などの景観や重厚感あふれるクラブハウス。そして、正門からクラブハウスへと続くマグノリアレーンと呼ばれるアプローチなど、どれもが招待者を最上級のもてなしで迎えてくれる。
2011年、2013年の2回、マスターズに出場した藤田寛之プロが「三田村さん、あれはたまらないですねぇ」と言っていました。マグノリアレーンを通ってクラブハウスに着き、ハウスの中を抜けてコース側に出た時の、何とも言えない高揚感がすごいって。きっと選手はみんなそう感じるわけです。
やっぱりね、雰囲気がものすごくいいわけです。見渡す限りね。だからこそ、テレビのこちら側にいる私たちにも、その魅力が伝わってくるんですね。
(第4回「松山英樹の連覇の可能性」に続く)
第1回「憧れの祭典の始まり」はこちら
第2回「オーガスタ・ナショナルGCの魔力」はこちら
取材・文/志沢 篤