現役選手だけではない。かねてから「大谷マニア」を公言する元ヤンキースのCC・サバシア氏も球場を訪れ、大谷が2年連続でMVPを獲得できると断言した。

「現時点でア・リーグのMVPは(ヤ軍の)ジャッジか大谷だろう。私は大谷を選ぶ。彼を毎年MVPにしないことが難しいぐらいだ」

通算251勝のサバシア氏は理由として、投手・大谷の好成績を挙げ「改善し続けて、どんどん凄くなっている。直球がいい」と話した。

現役のトッププレイヤー、そしてMLBに名を残すOBがMVPに推すのは異例のことだ。もし2年連続のMVP獲得となれば、今オフにも大谷の周囲はまた騒がしくなるだろう。

圧巻のフリー打撃「ファンに楽しんでもらえれば」

今年のオールスターでは、選手の試合前フリー打撃をケージから数メートルの距離で見られる機会に恵まれた。野球記者歴10年目だが初めての経験だ。

中でもヤンキースのジャッジ、スタントンの両主砲のスイングは凄まじかった。ジャッジは2メートル1、127キロ。スタントンは1メートル98、111キロの体格を誇るが、力感を感じさせないスイングから、ピンポン球のように打球を飛ばし、柵越えを連発。2人は練習中に何度も真横を通っていったが、そのたびに体の大きさに驚いた。

大物OBも現役プロも大谷に太鼓判。移籍騒動乗り越え2年連続MVP狙う_1

その2人に負けず劣らずのスイングを見せたのが大谷だ。29スイングで14本の柵越え。4セット目の2~5スイング目は、なんと圧巻の4連発。ドジャースタジアムの右翼スタンド後方の屋根の上まで届いた推定飛距離140メートル級の場外弾2連発に、スタンドはしばらくどよめきに包まれていた。一塁側と三塁側の真横、真後ろなど全方向から観察したが、他の選手と違い、まずボールを捉える甲高い衝撃音が凄まじい。また、素振りではなく、打撃練習でバットのスイング音が聞こえるのも大谷だけだった。

大谷の屋外フリー打撃は珍しく、今季は4月26日の1度しか行っていない。「もちろんファンの方に楽しんでもらえればと思っている。良い打撃練習だった」と笑顔で語っていたのが印象的だった。また、この日は登板機会はないがルーティンの「壁当て」、キャッチボールも行い、自身10勝目が懸かる後半戦初戦の22日の敵地ブレーブス戦に備えた。どんな時でも自分のペースを崩さない姿勢に改めて感嘆した。

当時はトレード期限2週間前で、大谷も話題の中心の1人だった。各球団の担当記者を取材すると「エンゼルスはチーム再建のために大谷を移籍させ、見返りに多くの若手有望株を獲得すべき」という声が多数だったが、地元ロサンゼルス・タイムズ紙のディラン・ヘルナンデス記者が「エンゼルスのアート・モレノ・オーナーが保有期間ぎりぎりの23年まで手放さないだろう」と語ったように、一筋縄ではいかない。唯一無二の二刀流が与えるチームへのインパクトはもちろん、観客動員、グッズ販売、スポンサー収入などの影響力も大きすぎるからだ。

今後エンゼルスはもちろん契約延長を目指すが、もし合意に至らなければ、トレード放出するだろうか。移籍するのであれば、どの球団が最もフィットするか。他球団のスター選手たちと楽しそうに話している大谷を見て、そんなことを考えている記者も自分だけではなかっただろう。