真面目な理事ほど暴走しやすい

このような、暴走ともいえる管理組合の規約変更や張り紙の掲示について、土屋氏は「暴走を主導する管理組合の理事には特徴がある」という。

「一概には言えませんが、正義感に基づいた行動を取る真面目な性格の方が多いということです。

長年しっかりした会社にお勤めになって、きっと仕事ぶりも優秀だったんだろうなという方が、定年後に自分が住むマンション管理組合の理事になったりすると、会社と同じやり方で『ルールはルール』とマンション管理を進めてしまい、トラブルが起こりがちです。

お仕事を引退して、自分が力を発揮できる場所や居場所がほかになく、頑張りすぎた結果暴走してしまうこともあります」(土屋氏)

また、とにかく厳罰化することで治安を維持しようとするのも特徴だ。

「ペット禁止にしても置き配禁止にしても、共用部でペットを歩かせていたり、長時間共用部に私物を放置していたりという、一部の悪質なルール違反者に対処するために厳罰化をしているんですよね。でもこれが悪手なんです。

いたずらに規約を厳罰化するのではなく、違反者に対して改善を求めていかなければ、ルールを守って暮らしている多くの住人にとっては、違反者よりも管理組合の存在のほうがストレスになってしまいますから」(同)

暴走が始まってからでは遅い

管理組合の暴走がいきすぎると、マンションの資産価値が下がるリスクもある。

「少し前に、渋谷のとあるマンションで管理組合が暴走して、ニュースでも話題になりました。理不尽な規約がまかり通っているマンションとして有名になってしまうと、最終的には資産価値が下落するリスク、さらに『暴走管理組合にはつきあいきれない』と管理会社のほうから契約解除を通告されるリスクもあります」(同)

具体的な生活の不便を感じない限り、管理組合の運営に関心を払うこともなく、総会にも出席しない「サイレント住人」として暮らしている人も多いだろう。しかし、暴走が始まってからでは遅い。快適な住環境、ひいては資産価値を守るためにも、集合住宅に住む人は管理組合の動向には常に関心を持っておいたほうがよさそうだ。

取材・文/田中三呂