正当な手続きで規約を変更しているか要チェック

Aさんにしてみれば寝耳に水でしかない話だが、こうした規約改定は許されるのだろうか? 土屋氏は自身の見解をこう示す。

「賃借人に限ってペットを禁止するというのはあまりに理不尽なので、総会の議事録を確認し、正当な手続きを踏んで規約が変更されているのかどうか確かめることをおすすめします。

『所有者ではない賃借人に議事録を見せる義務はない』と言われるかもしれませんが、規約変更によって引っ越しを検討せざるを得ない(明確な害を被っている)状況ですから、『利害関係者として確認する権利がある』と主張できるはずです」

また、規約変更のためには通常区分所有者および議決権の各4分の3以上の賛成が必要だが、果たして本当にこの規定を満たす賛成を得て、規約変更をしているのだろうか。

「高圧的で横暴な文面から考えると相当感情的になっていますから、そもそも正当な手続きを踏んでいるかも確かめたほうがよいですし、張り紙の内容と実際の規約変更の内容に齟齬があるかもしれません。

また高圧的な印象を与えかねない貼り紙で『ペット飼育は禁止になりました!』と一方的に伝えるのは、そもそも望ましいことではないでしょう」(土屋氏)

とはいえ、賃借人の立場で「ペット禁止」を覆すのは、現実的には難しそうだが……。

「覆すことはできなかったとしても、議事録を確認したうえで、引っ越しの際に『入居時と大幅に条件が変わったこと』『管理組合が横暴で恐怖心を感じるので暮らしづらいこと』などを理由に、オーナーに賃貸借契約時に支払った礼金や敷金の一部返却を交渉することも視野に入れてみるといいのではないでしょうか」(同)

独断で管理組合が防犯カメラを確認するのはNG

また前出の張り紙には「防犯カメラの記録を確認し、日時と人物を特定済」とあるが、管理組合が独断で防犯カメラを確認していることも問題だと土屋氏は指摘する。

「防犯カメラの記録内容を確認することは、一歩間違えればプライバシーの侵害にもなりかねないので、多くの集合住宅では『警察立ち合いのもとで確認すること』が規約や細則で定められています。

『警察への通報も検討している』と文面にあるので、現時点では警察には連絡していない=警察の立ち合いなしに防犯カメラの記録を確認している可能性が高いですよね」(同)

また管理組合が独断で防犯カメラを確認するのは、以下のような問題もはらんでおり、とても看過できることではないそうだ。

「防犯カメラの記録を勝手に確認して、若い独身女性の生活内容や異性関係を観察していたマンションの管理人が問題になったり、『子供が駐車場の車に傷をつけた』といった事件を管理組合が子供の実名と共に公表し、その子が近所の子供たちからいじめられてしまったという例も過去にあります。こうした被害を生まないためにも、防犯カメラの取り扱いには細心の注意を払わなければいけません。今回のような防犯カメラの運用は、あきらかに管理組合の暴走です」(同)