銭湯マニアが生み出す、先進的で独創的なアイデア

さぁ、どこから始めようか!?  頭の中に浮かんでくるさまざまなアイデアの中から、研雄さんがまず実行に移したのは20代、30代から注目度の高いサウナだ。サウナを充実させることで、『十條湯』の暖簾をくぐるお客さんに喜んでもらおうと考え、平日にさまざまなイベントを開催した。ペパーミントオイルをサウナの蒸発皿に導入したり、ヴィヒタ(白樺の枝葉をまとめたもの)をサウナ室に吊るし、香りも楽しんでもらえるようにするなど、これまでの銭湯にはなかった施策を展開していく。

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男湯サウナ室。平日には日替わりでイベントが行われる
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脱衣所の二階には、サウナ利用者専用の広々としたスペースが

創意工夫は、これだけでは終わらない。サウナとセットの水風呂にも注目。水質の良さを感じてもらうために「かけ流し」にすることで、肌なじみがいいという評判を得ることに成功。お客さんからも好評の設備のひとつとなった。

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肌なじみがいいと評判のかけ流しの水風呂

銭湯マニアが口説き落としたもう一人のマニア

こうした努力が実り、徐々にではあるが、お客さんの数は増え始める。あと一歩…もうひとつ、何かが加われば…。と思うものの、なかなか、これ!というアイデアが浮かばない。そんなとき、目に飛び込んできたのが開店休業状態となっていた喫茶スペースだった。
同時に、研雄さんの頭に、銭湯と喫茶の組み合わせについて熱く語る、ひとりの女性の顔が浮かぶ。彼女と知り合ったのは埼玉の喜楽湯時代。銭湯の取材に訪れた、銭湯好きで、喫茶マニアのれいなさんだ。

「夢を実現できるのは、ここしかない!!」と、口説き落としたのが、『十條湯』復活への最後の1ピース、『喫茶深海』のはじまりだった。

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『喫茶深海』を担当するれいなさん

コンセプトは居心地が良く、インパクトのある空間。浴室から喫茶へと広がる至福の空間を作り上げることができれば、収益アップは間違いない。飲食未経験だったれいなさんは、老舗喫茶店で修行をしながら、メニューへのこだわりや、ドリップ方式などを女将さんから教わり、喫茶スペースの変革に向けて動き出した。

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浴室内にはれいなさん作成の喫茶紹介が並ぶ