封印された北朝鮮からの情報

さて、田中実さんと金田龍光さんの生存情報を伝達された日本政府はどう対応したのだろうか。伝達からおよそ5年後の共同通信の解説記事が、驚くべき内実を明かしている。見出しは「北朝鮮拉致情報、政府高官が封印」だ。

だが、全国配信されたものの、地方紙に記事全文が掲載されることも少なく、大手紙は「確認が取れなかった」(某紙記者)ため、共同通信の独走だった。解説の一部を引用する。

「(解説)日本政府高官が2014年、拉致を巡る新情報を北朝鮮から伝えられながら公表しないことを決めていた。02年の日朝首脳会談で北朝鮮が拉致を認めて以来、被害者5人や家族の帰国以外に進展はなかった。それだけに、田中実さんと金田龍光さんが生存しているとの情報を、日本が北朝鮮から引き出したのは成果といえるはずだ。被害者家族はもちろん多くの国民が交渉の行方を注視している。成果の一端を開示すべきだ。

2人は結婚し、平壌で家庭を持って暮らしており『帰国の意思はない』とも伝えられた。日本政府が再三、安否確認を求めている横田めぐみさん=失踪当時(13)=ら政府認定の被害者については、新情報は寄せられなかった。政府高官は『驚きと無念さが交錯した』と振り返る」(2019年12月26日配信)

共同通信は続けて、

「政府高官が『(2人の情報だけでは内容が少なく)国民の理解を得るのは難しい』として非公表にすると決めていたことが26日、分かった。安倍晋三首相も了承していた」
「菅義偉官房長官は共同通信の取材に『今後の対応に支障を来す恐れがあることから、具体的内容について答えることは差し控える』とコメントした」(2019年12月27日配信)

と報じた。北朝鮮が田中さんと金田さんが平壌で生存していると伝えてきた事実を、政府が秘匿し、それを安倍総理も認めていたというのである。菅義偉官房長官(のちに拉致問題担当大臣)が猛反対したというが、情報不開示の最終的判断者が安倍総理であることはいうまでもない。