「いつフリーに?」は偏見。TBS上村彩子アナが目指すSDGsなアナウンサー像_5
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“アナウンサー”というマイノリティ

――上村さんが今後目指していく「SDGsなアナウンサー像」はありますか?

私が発した言葉が、差別や偏見を助長することがあっては絶対にならないので、言葉についてはより意識していきたいですね。アナウンサーはOAするまでの「最後の砦」。生放送でVTRの中で間違った表現や言葉があったら、私たちがスタジオでその場で訂正すれば後から謝罪しなくても済みます。

放送ガイドラインでは細かく規則が決められています。その一つが「障がいがある/持つ人」という表現。「障がいを持つ人」は「自分の意思で持っている」と捉えられかねないので、「障害がある方・ある人」という表現にしなくてはいけません。また、「女子アナ」という言葉も、女性に対するマイナスの意味が含まれたり、子どもじみた文脈で使わないようにする、といった記載もあります。

もしかしたら、私も“アナウンサー”というマイノリティには所属しているかもしれないですね。勝手なイメージを持たれて、嫌なことを言われたことは何度もあります。

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――例えば、どのようなことを言われたのでしょうか?

「すぐやめるんでしょ?」「いつフリーになるの?」は社内外問わずよく言われますね。同じ会社員として入社したにもかかわらず、他部署の人は言われないのにアナウンサーという職種なだけで言われてしまう。頑張ってやっていても、なぜやめる前提で愛社精神がないようなイメージを持たれてしまうんだろうと思います。

あとは「スポーツ選手と結婚するんでしょう?」も。仕事でアスリートにお会いする機会が多いのですが、男性アナウンサーは同じ質問をされている場面に遭遇したことがありません。世間のイメージがあるんだと思いますが、性別の違いや役割を決めつけた表現を、私はしないようにしようと思いますね。

例えば、友人との会話の中でも今までは「彼氏・彼女はできた?」と聞いていたけど、「パートナー」の方がいいんだなとか、話し始めるときに「普通は……」と言ってしまいがちですが、普通なんて自分の主観でしかないなとか、さまざまなことに意識を向けるようになりました。言葉を扱うアナウンサーという職業上、受け取った人がどういう気持ちになるか想像力を働かせて言葉を使っていきたいですね。

――最後に、「スナックSDGs」の“ママ”としてどのようにSDGsの大切さを伝えていきたいですか?

「堅苦しい」「難しそう」と思われがちなテーマだからこそ、本当はそんなことないと伝えていきたいです。例えば、猛暑や異常気象による災害が起きたら、地球に異常が起きていると感じられますが、そうでなければ自分ごととして捉えにくいものもあると思います。このラジオをきっかけに気づいたり知ったりするだけでも、何かアクション起こせるはず。リスナーの方たちも一緒にスナックで座って聞いているような感覚で、楽しく学んでいく手助けができたらいいなと思っています。

【番組情報】
スナックSDGs powered by みんな電力
放送局/TBSラジオ
放送日時/毎週土曜日、午後7時30分~8時
パーソナリティ/大石英司(UPDATER代表取締役)、上村彩子(TBSアナウンサー)
公式HPはこちら>>
https://www.tbsradio.jp/2030sdgs/

取材・文/堤 美佳子
撮影/吉楽洋平