「いつフリーに?」は偏見。TBS上村彩子アナが目指すSDGsなアナウンサー像_4

「マイノリティの人たちの気持ちが全然わかっていなかった」

――番組の中で、特に印象的だったエピソードやゲストはいらっしゃいますか?

「パートナー」をテーマに、加藤茶さんと結婚された加藤綾菜さん、臨床心理士で女性のパートナーとYouTubeチャンネルを運営されているみたらし加奈さんのお二人をゲストにお呼びした回です(2022年5月7日、15日放送回)。

加奈ちゃんとは大学時代の知り合いで、このラジオの担当が決まった際に「呼びたいゲスト」として挙げた一人。私が加奈ちゃんと出会った当時、彼女には男性のパートナーがいたのですが、その後なかなか会えないまま社会人に。加奈ちゃんが女性のパートナーとYouTubeを始めたときに「あれ? 男性が好きじゃなかったのかな?」とずっと気になっていたんです。この番組で再会を果たして、どのように自分のセクシュアリティに気がついたのか、家族へのカミングアウトについてなどお話してくださいました。

彼女は「好きになった人が好きな性」のパンセクシャル(全性愛者)。その言葉も初耳でした。これまでは自分にとって近い存在の中で「LGBTQ+」の方がおらず、ニュースなどで扱うにもどうしても自分ごとにするのが難しかったんです。でも、この再会をきっかけに今年5月に初めて「東京レインボープライド」(LGBTQ+の日本最大規模のイベント)に足を運びました。

そこには住宅紹介やお墓、新婚旅行のアテンド、高齢になったときの相談会などさまざまなブースが出展されていました。LGBTQ+の人たちが自分の想像以上に生きづらいことが多いのだと驚きました。一緒に住みたいと思っても部屋が借りづらい、一緒のお墓に入りたいと思っても同性婚が認められなければ親戚からの理解が得られないと叶わない。

マジョリティの方に属している自分は当たり前のように受けていた恩恵も、受けられないことが非常に多いことを知り「マイノリティの人たちの気持ちが全然わかっていなかったな」と改めて感じた経験でした。

もう一つは、双子のお兄さんとともに福祉実験ユニット「ヘラルボニー」を設立された松田崇弥さんにご登場いただいた回です(2022年6月4日、12日放送回)。ヘラルボニーは、主に知的障がいのある方々が描いたアート作品を商品として世に伝えているブランド。知的障がいがある人たちを「異彩」と定義して、その異彩を社会に放っていくべく活動をされています。

松田さんのお話で印象的だったのは、「アートの価値が正しく評価されて、そこに社会的な価値が生まれるという循環をつくりたい」というお話です。「障がい者のアートだから買ってあげよう」「助けてあげよう」ではなく、アートとして純粋に価値があったら値段もついていくはず。それこそが新たな福祉の形だなと思いました。