知名度を上げる馬場と無名の猪木
馬場と猪木の通算七度め(1年10カ月ぶり)のシングルマッチは、『第5回ワールド大リーグ戦』の関西エリア巡業中の4月25日、兵庫・豊岡市総合グラウンドでおこなわれ、馬場が12分3秒、体固めで勝った。
3カウントのピンフォールには“体固め”“片エビ固め”“エビ固め”“回転エビ固め”“逆さ押さえ込み”“首固め(スモール・パッケージ・ホールド)”といったバリエーションがあるが、相手の脚や首をフックせずに単純に上から覆いかぶさるだけでフォールを奪う“体固め”は、負けたほうにしてみれば大の字=完全KOのイメージなのだろう。この“体固め”というフォールの取り方にも当時の両者のポジションの違いがはっきりと表れていた。
猪木は同シリーズ後半戦の5月5日(札幌中島スポーツセンター)、遠藤幸吉との試合中に左大腿筋を部分断裂、全治2カ月の負傷でリーグ戦を途中棄権した。ケガによる欠場はこれが初めてだった。
馬場はこの『第5回ワールド大リーグ戦』終了後、映画『喜劇駅前茶釜』(東宝・久松静児監督)にゲスト出演。プロレスラー役ではなく、セリフのある脇役を演じた。まだ無名の若手選手という位置づけでしかなかった猪木がケガで試合を休んでいるあいだに、アメリカ帰りの馬場はテレビや映画にひんぱんにゲスト出演してお茶の間のタレントとしての知名度をますます上げていった。
1963年7月に戦列復帰した猪木は、この7月から10月までの3カ月間にさらに9回、馬場と対戦。ここまでの7回の顔合わせとの大きな違いは、この9試合のうちの4試合が45分3本勝負で争われたことだった。
試合の日時・場所と結果は以下のとおりだ。