4年で売り上げが10倍超に

まずは恵の基本的な情報を集めるところからだ。ホームページを見たり、法人登記簿を取ったりして調べた結果、次のようなことが分かった。

会社は2012年に名古屋市で設立されていた。代表取締役社長は中出了輔氏という33歳(2023年時点)の男性。2018年に名古屋市内に最初のグループホームを開設し、数年で事業を拡大。東海や関東を中心に12都県で障害者グループホームを約100カ所運営していた。

障害福祉の事業者は中小・零細がほとんどだ。100カ所はかなり多い。「大手」と言っていい規模だ。2018年に3億円弱だった年間売上高は、2022年には約38億円と、わずか4年で10倍超になっていた。急激なスピードで数を増やしていることが分かる。

なお、障害福祉の事業者の場合、「売り上げ」といってもそのほとんどは、事業者に支払われる公的な給付金(報酬)。つまり、税金だ。グループホームの場合は、入居者が負担する家賃や食費などがそれに加わる。

基礎的な情報を集める一方で、私は愛知県を中心に知り合いの障害福祉関係者にかたっぱしからメールを送った。「ふわふわというグループホームを運営している恵という会社のことを取材しています。何か情報を聞いていたり、入居者のご家族やスタッフを知っていたりしませんか?」。そんな具合だ。

役所の発表を記事にするのではなく、自分たちで調べて、隠れた不正や問題を明らかにする「調査報道」という手法は、時にこんなふうにして始まる。関係者に当たり、知っている人を紹介してもらい、またその人に誰かを紹介してもらう。そうやって、核心的なことを知っている人物に近づいていく。

情報は徐々に集まってきた。

「複数の虐待通報が行政に寄せられている」

「職員の入れ替わりが激しい」

「入居契約のときの対応がずさんだった」

そんな話が聞こえてきた。ただ、間接的な情報だったり、抽象的な内容だったりして、記事にするには弱い。

一方で、こんな話も聞いた。

「障害が重度の人を受け入れてくれている」

「よいホームとは言えないかもしれないが、『ここならすぐ入ることができる』ということで、親が年を取って面倒を見きれなくなったケースではありがたい存在になっている」

何とも判断が難しい。実態を見極めるには、内部のスタッフや入居者の家族に直接見聞きしたことを話してもらう必要がある。

もちろん、入居者本人に話を聞ければ一番いいが、ふわふわの入居者は重い知的・精神障害がある人が大半のようだ。会社側の協力なしに本人にアクセスするのはほぼ不可能だし、具体的なことを証言してもらうのも難しい。

人づてに「スタッフや入居者家族をご存じないですか」と聞いていくと、愛知県内の福祉関係者が「恵にひどい対応をされた家族がいる。話してもいいと言っている」と、ある親御さんを紹介してくれた。