2年にわたる取材の始まり

黒川さんが研修に出てから3カ月後の2023年7月。私が会社で仕事をしていると、後輩の記者から電話があり、「こんな情報をキャッチしたんですけど」と相談された。

「愛知県を中心に各地で障害者のグループホームを運営する会社があって、厚生労働省が調査している」

会社の名前は恵。グループホームの名前は「ふわふわ」だという。

「ふわふわ……?」。どこかで聞いたことがある名前だ。記憶をたどると、2カ月ほど前、別の取材で愛知県の福祉関係者から名前を聞いていた。2022年に群馬県内のグループホームでスタッフが入居者に暴力を振るい、死亡させた事件が起きていた。それがふわふわという名前のグループホームだった。愛知県の関係者は運営に懸念を示していた。

写真はイメージです 写真/Shutterstock
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後輩からもたらされた情報は、具体的にはこんな内容だった。

「会社がグループホームの入居者から食費を過大に徴収していて、厚労省が所在地の各自治体に調査をかけている」

死亡事件と食費の過大徴収。ただ、これだけでは何とも言えない。「何はともあれ、手分けして取材してみよう」。後輩の記者と分担のしかたを相談し、取材に取りかかった。このときは「ちょっと問題がありそうな事業者だな」。その程度の認識だった。約2年にわたる取材はそんなふうにして始まった。