「ぼくたちは1500回の昼と夜を取り戻したんだ」
『夜霧よ今夜も有難う』(1967年3月11日公開)と『波止場の鷹』(同年8月12日公開)は、ヒロインに浅丘ルリ子を迎えた大人のラブ・ストーリー。
特に前者は日活ムードアクションの代表作のひとつになった。
物語の骨格は、ハンフリー・ボガートとイングリッド・バーグマンが主演したアメリカ映画、名作『カサブランカ』(1942年)をもとにしている。
第2次世界大戦下のモロッコを舞台にした『カサブランカ』は、フランスを占領したナチスに対するレジスタンスが時代背景としてあった。
それを『夜霧よ今夜も有難う』では、ベトナム戦争に反対する運動が盛んだった当時の状況から、元船員で横浜のクラブを経営する主人公の裕次郎が、海外への逃亡に手を貸す“逃がし屋”という設定にした。
祖国への帰国を依頼する東南アジアの革命家が、日本人の妻と連れ立ってやって来る。その妻は、かつて徹(裕次郎)の婚約者だったにもかかわらず、4年前に突然、消息を絶って姿を消したままになっていた秋子(浅丘ルリ子)だった。
裕次郎が再会した浅丘ルリ子に向かって、「一体何をしていたんだ。4年だぞ、4年」と問いかけるシーンが出てくる。それに対して、「1500回朝を迎え、1500回昼を迎え、1500回夜を迎えたわ」と、浅丘ルリ子は冷静に答える。
女優生活60年を記念して出版した著書『女優 浅丘ルリ子 咲きつづける』で、彼女はそのセリフもふくめて、映画についてこんな感想を述べている。
「現実にはありえないような、キザなセリフがいっぱいちりばめられていて、それがとっても素敵でした」
再会時の台詞を受けて、裕次郎は最後の別れの際に、こう言い放つのである。
「ぼくたちは1500回の昼と夜を取り戻したんだ」
主題歌「夜霧よ今夜も有難う」は、1967年2月に発売されたレコード(B面は「粋な別れ」)がヒット曲になったばかりか、日本の映画史に残る切なくもロマンチックな裕次郎映画を生んだ。
そして裕次郎のチェット・ベイカーを彷彿とさせる甘い歌声とともに愛され続けて、日本の音楽史に残るスタンダード・ソングになった。
人間の一生には、花の部分と、実の部分と、幹と根とがあるように思う。子どもは、みんな種で、どんぐりだ。学生時代は小さな木だ。この辺から花をチラチラ咲かせる連中が出てくる。裕次郎は、そのころに花を咲かせ、そのあとずうっと花として生きて、一生を終わったのだ。(浜口庫之助)
文/佐藤剛、TAP the POP
引用
浜口庫之助『ハマクラの音楽いろいろ』(リットーミュージック)














