1杯「260円」のメニューを残し続ける理由
その姿勢は、「小盛り」の価格設定にも表れている。並盛360円と比べて、100円安い260円。定食屋やラーメン店では、量を減らしても20円引き、あるいは値段が変わらないことも珍しくない。それと比べても、かなり思い切った設定だ。
「少しでも安く食べられるものを残したいんです。並盛の値段も上がってきているので、入りやすい価格帯のメニューをひとつでも置いておきたい。安くする方法として、量を減らしたり質を落としたりするやり方もあると思いますが、それは考えていません。自分自身、この店のファンだったからこそ、お客さんをがっかりさせたくないんです」(山本社長)
実は「スエヒロそば」が値段をギリギリまで抑えられている背景には、店の努力だけでなく、賃貸店舗の大家さんの厚意もあるという。2022年1月に先代から引き継ぐタイミングで、建物側の耐震工事や改装も入ったが、その後も大家さんはテナント料を据え置いてくれた。
こうした多くの支えによって、スエヒロの「早い、安い、うまい」は保たれている。
それでも、困難は尽きない。
スエヒロで働く人は全員が正社員で、そのなかには外国籍のスタッフもいる。チームワークで店を回し、深夜から朝にかけての営業を支えている。だが今後については、不透明さも大きい。
「外食分野での特定技能など在留資格の関係で、人材確保がこれまで以上に難しくなっています。だから、このシフトをいつまで維持できるかも、正直まだわからないです」
物価高、賃料、人材。立ち食いそばの一杯の背後には、多くの社会の問題が詰まっている。
それでも今日もスエヒロは、街の人通りがまだ少ない時間から営業を始め、来る人の心とお腹を温め続けている。
#2へつづく
取材・文・撮影/ライター神山
■そばのスエヒロ 八丁堀店
■営業時間深夜1時から14時まで(月曜日は朝5時30分より)
■定休日:日(月ー土は祝日でも通常営業)















