判決を受けて

医事法学者として裁判に尽力してくれた辰井聡子教授は、判決確定を受け、日本社会が「秩序や安全を重視するあまり、法を軽視してきた」と指摘した。

「この文脈では『法』とは『自由』そのものを意味しています。すべてを行政に委ね、行政に無謬性を求めること、例えば、身体や健康に関わる問題が起これば、すべて行政のせいだと責め立て、厚生労働省の責任を問うということは、行政に法を超えた権限の行使を強いることにつながり、その分だけ、私たちの自由を切り崩すことになります。

それが、実際に、この社会で起きていることです。この事件に関心を寄せていただいた方々には、今回の問題が、究極的には、自由と秩序に対する私たちの態度に起因していることに思いを馳せ、『法』というものは自由を守るためにこそ存在しているのだということ、自由を守るためにこそ『法』を正しく扱わなければならないのだということに、ぜひ、関心を寄せていただけたらと思います」

「法」とは、自由を守るためにこそ存在している。私は法律家として、自由を守るために法に関わっていく。この裁判を通じて、そう確信した。

2023年、私は日本初の公共訴訟を支える専門家集団「一般社団法人LEDGE(レッジ)」の代表理事に就任し、司法を通じて不合理な法や制度を変えていく活動に取り組んでいる。

LEDGEのメンバー 写真/雨森希紀
LEDGEのメンバー 写真/雨森希紀
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原告として声をあげる市民、裁判の傍聴や寄付といった形で支援してくれる市民、あるいは、翻訳やデザイン、キャンペーンなど専門的なスキルを提供する方法で支援してくれる市民。自由で公正な社会を生きたいと願う多くの市民に、LEDGEは支えられている。

タトゥー裁判は、司法によって社会を変えることができる、という希望を与えてくれた。その希望の種を、公共訴訟の実践を通じて実らせたい。


*1 最判令和2年9月16日決定刑集第74巻6号581頁。

文/亀石倫子

はじめての公共訴訟 社会を動かす、私たちのツール
井桁 大介 (著), 亀石 倫子 (著), 谷口 太規 (著), 丸山 央里絵 (著)
はじめての公共訴訟 社会を動かす、私たちのツール
2026/5/15
1,012円(税込)
224ページ
ISBN: 978-4087214109

社会の中で「おかしい」と感じたとき、不条理な壁に突き当たったとき、私たちは何ができるのか。差別、労働、環境問題、ジェンダー、社会保障──さまざまな課題に対し、裁判という方法で社会のあり方を問い直し、変革を働きかけるのが「公共訴訟」である。
本書は、実際の事例や当事者の物語を手がかりに、その歴史と役割を解説。公共訴訟はどのような戦略、連帯によって社会を変えてきたのか。裁判を「社会を動かすツール」としてとらえ、個人の声が制度や社会を変えていくプロセスと、その可能性を示す入門書。

同性婚訴訟、タトゥー裁判、大川原化工機事件、立候補年齢引き下げ訴訟……
もっと公正な社会を生きたいあなたへ

◆推薦◆
よりマシな社会をあきらめたくないすべての人へ。
ここに私と公共をつなぐ回路がある。
──哲学者 朱喜哲氏

少数の痛みは、「大したことない」ことにされやすい。
「こうなってほしい」が、感情の問題と一瞥(いちべつ)される。
公共訴訟はそんな社会の扉をこじ開ける、希望。
──NO YOUTH NO JAPAN創設者 能條桃子氏

自分たちの手で社会はどんどんよくしていくことができるなんて、なんだ、最高じゃないか。
──小説家 山内マリコ氏

◆目次◆
第1章 声をあげる人々、その物語──公共訴訟を知る
第2章 公共訴訟は社会をどう変えるか
第3章 公共訴訟の誕生と歴史
第4章 データで見る公共訴訟
第5章 なぜ数が少なく、勝ちにくいのか──公共訴訟の抱えるハードル
第6章 新たな動きが生み出す、新しい連帯
第7章 公共訴訟の未来

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