有罪判決
正式裁判を申し立て、彫師の医師法違反事件は大阪地方裁判所へ移送された。私は信頼できる5人の弁護士に声をかけ、弁護団を結成した。
同時に、何人かの信頼する新聞記者に「これからすごい裁判が始まる」と伝え、事件の概要や想定される争点、考え得る立証方法などを説明した。
通常の刑事裁判ではなく、憲法で保障された「職業選択の自由」や「表現の自由」が問題になる重要な裁判になる、と。
「タトゥー 医業か芸術か」「略式起訴の彫り師、無罪求め裁判へ」
「朝日新聞」大阪版の朝刊社会面に大きな記事が掲載されると、ほかの新聞、テレビ、雑誌などから続々と取材の申し入れがくるようになった。特徴的なのは、海外メディアからの関心が高かったことだ。
欧米では、タトゥーはファッションやアートとして広く受け入れられており、彫師に特化したライセンス制度を設けていたり、衛生管理等に関する講習を一定時間受けることで営業が許可されていたりする。
ジャパニーズスタイルと呼ばれる日本の和彫りは人気があり、繊細な美的感覚と高い技術を持つ日本の彫師は尊敬されているという。その日本の彫師が、医師免許がないことを理由に刑事裁判にかけられているのだ。海外メディアは、この驚くべき裁判を、日本特有のタトゥーに対するネガティブなイメージとともに報じた。
こうした報道に対する社会の反応はさまざまだった。「タトゥーは嫌いだが医師免許を要求するのはおかしい」という意見もあったが、「なんの資格もないのに皮膚にインクを注入するという危険な行為をすれば、ケガをさせたり感染症になるリスクがあるのだから、医師免許を要求するのは当然だ」という批判的な意見のほうが多かった。
うんざりしたのは、「権利を主張するならルールを守ってからにしろ」というバッシングだ。
ルールはルール、悪法も法なり。どんなにおかしなルールでも、ルールである以上従うべきだと考える日本人は意外に多い。
しかし、不合理なルール、不必要なルールは見直す必要があるし、時代の変化とともに、あるべきルールも変わるはずだ。バッシングは想定内だった。私たち弁護団は、1年2か月にわたり、公判前の争点整理手続きを粛々と進めた。













