最大の焦点はボランチの層か? 中盤の耐久力に不安
その利点は明らかだ。相手がグループステージ初戦で対戦するオランダのように個の力と展開力を持つチームなら、守備時に5バック気味に耐え、前田や伊東の推進力で背後を突く選択肢がある。チュニジア戦のように球際と切り替えが勝負になる試合では、佐野や田中の走力、遠藤の回収力が重要になる。
グループステージ3戦目で対戦するスウェーデンのように高さと強度を備えた相手には、冨安健洋、板倉滉、渡辺剛、伊藤洋輝らの対人能力と空中戦の強さが生きる。相手によって戦い方を変えられる柔軟性こそ、このチームの特徴だ。
だが、柔軟性は裏返せば専門性の薄さにもつながる。特にこのチームの主軸として期待がかかる鎌田に負荷が集中した場合、誰が同じ水準で中盤の重心を支えるのか。
また、今季ほとんどスタメンで出場する機会のなかった主将の遠藤のコンディションにも不安が残り、リードした終盤に、相手の波状攻撃を受け止めながら、ただ蹴り返すのではなく時間を進めるプレーを誰が担うのか。劣勢時に前線の枚数を増やした時、中盤の防波堤は保てるのか。日本が本気で8強以上、目標として掲げる優勝を狙うなら、ここは避けて通れない問いになる。
三笘不在の影響も、単に「左サイドの突破力が落ちる」という話にとどまらない。三笘がいることで相手の右サイドバックは前に出にくくなり、相手の守備ブロックは横に広げられる。その重力がなくなる分、日本は別の方法で相手を動かさなければならない。
中村の得点感覚、久保の創造性、堂安の内側への侵入、伊東の縦への加速。さらに、20歳の後藤や21歳の塩貝の野心あふれる若さ。個々の武器はあるが、三笘という一点突破の切り札を失った以上、攻撃はより組織的で、より連動したものを求められる。
南野の不在も象徴的だ。狭いエリアでの勝負強さ、ゴール前での嗅覚、代表で積み重ねてきた経験は、短期決戦で頼りになる要素だった。彼がいないことで、2列目から点を取る役割は久保、堂安、鎌田、鈴木唯人らに分散される。誰か一人の代役を探すのではなく、複数人で穴を埋める発想が必要になる。
今回のメンバーは、過去の悔しさを晴らすための物語をあえて完成させなかった。南野と三笘の不在は痛い。長友の選出は明るい歴史だ。しかし、このチームの本質は、そこでは終わらない。森保監督はスターの帰還よりも、現時点で戦える集団の総合力を選んだ。だからこそ問われるのは、個の名前ではなく構造の強さである。
日本が新しい景色を見るためには、試合の主導権を握る時間だけでなく、握れない時間をどう耐え、どう回復し、どう勝ち筋に戻すかが鍵になる。華やかな前線、経験豊富な守備陣、そして歴史を背負う長友。その間にある中盤の厚みこそが、北中米での日本の天井を決める。
今回の26人は、夢の大きさと同時に、怪我からの回復の状況が見通せないという不安も残るメンバーだ。選ばれた選手たちが、本大会でその不安をプレーで塗り替えられるか。怪我でリベンジの機会を失った選手たちの無念を晴らすような快進撃を期待したい。
取材・文/集英社オンライン編集部













