あえて選手と距離をとった井端監督

純白の精神に方円の血をたぎらせる。

松田宣浩の侍ジャパンへの想いは、どこまでも真っすぐである。2012年にキューバとの強化試合で初めてジャパンのユニフォームに袖を通した。そこから、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)とプレミア12では2回ずつ代表として日の丸を背負い戦った。

松田の気概を思い出す。

「日本代表って選手やファン、野球界全体から認められる存在じゃないとなれないじゃないですか。僕が選ばれたのって、どんなにきつい時でも元気を出してプレーしてきたからだと思うんです。だから、ジャパンでも同じ気持ちでチームを盛り上げていきますよ」

15年からお馴染みとなったホームランセレブレーション『熱男』は、現役を引退した今も松田の代名詞として定着する。

今年開催された第6回WBCにおいて、松田が貫く信念である元気、活力を欲したのが、監督の井端和弘だった。

ともに亜細亜大出身という縁。「一緒に頑張ろう」と、井端から野手総合コーチとして誘われた松田はふたつ返事で承諾した。

「僕自身も特別な想いで日の丸を背負ってきたんで、断る理由はなかったですよね」

松田宣浩(まつだ・のぶひろ) 1983年生まれ、滋賀県出身。亜細亜大から2005年にソフトバンク入り。豪快な打撃と堅守でホークス黄金期を支え、通算307本塁打、ゴールデングラブ賞8度。「熱男!」のパフォーマンスでも人気を集めた。侍ジャパンでもWBC、プレミア12に出場。2023年限りで現役引退。2026年のWBCでは野手総合コーチとして侍ジャパンを支えた
松田宣浩(まつだ・のぶひろ) 1983年生まれ、滋賀県出身。亜細亜大から2005年にソフトバンク入り。豪快な打撃と堅守でホークス黄金期を支え、通算307本塁打、ゴールデングラブ賞8度。「熱男!」のパフォーマンスでも人気を集めた。侍ジャパンでもWBC、プレミア12に出場。2023年限りで現役引退。2026年のWBCでは野手総合コーチとして侍ジャパンを支えた
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松田から見る井端は、ビジョンが明確な監督だった。ドジャースで2年連続世界一を支えた大谷翔平と山本由伸をはじめとした、実績十分のメジャーリーガーたち。ゴールデングラブ賞7度を獲得する卓越したショートの守備に、打席でも粘り強さを発揮する西武の源田壮亮も最初から決めていた。

チームの骨格をはっきりと示す井端ではあったが、威厳を振りかざすことはなかった。メンバー選考の段階からそうで、ソフトバンクの牧原大成と広島の小園海斗は、松田の進言が実現した選出だった。

「『このふたりは入れたいな』っていう強い思いがありました。両リーグの首位打者を獲ったプライドもあるでしょうし、守備でも複数ポジションを守れるユーティリティ性もある。レギュラーとして試合に出なくても、チームの力になってくれると思っていたんでね」

これまでWBCを指揮した監督は、チームを世界一へと導いた王貞治や原辰徳、栗山英樹でわかるように強烈なカリスマ性があった。彼らに比べて井端は、どちらかと言えば“地味”なほうだったかもしれない。それは、選ばれし30人のトッププレーヤーを束ねようとする姿勢を強調しなかったこともある。

日本代表の本格始動となった2月の宮崎合宿から、監督は「選手がパフォーマンスを発揮できる環境が一番だから」と、あえて距離をとった。

バッティングでは「そこから見た景色のほうがいろいろと見えるものがある」と、現役時代の習慣からショートの守備位置付近からチームの一挙手一投足に目を凝らす。要所で選手に声をかけるなどのフォローはしていたのだろうが、松田ら首脳陣ですら気づかないほどさりげない行為だったという。

松田が述べる見解は、一種の真理でもある。