同級生・侍戦士が見た素顔の山本由伸
山本由伸と牧秀悟。
今では気心の知れた仲だが、牧にとって山本は、プロ入り前から追いかけるべき大きな背中でもあった。入団会見で対戦したい投手として名を挙げた山本との対戦は、1年目のオープン戦でさっそく訪れる。念願の対戦は2打数1安打だった。
翌22年のオープン戦も中前打と三振の2打数1安打。牧は、この時の対戦で山本のさらなる進化を感じ取ったという。
「この時は、前の年に投手4冠の大エースですから、まっすぐを打てたらいいなくらいの気持ちで、もう、何も考えずにいきました。正直、まっすぐも変化球も、どんな球を投げるんだろう? っていう、好奇心のほうが勝っていましたよね。結果はヒットを打ちましたけど、まったく手が出なかった印象しか残ってないです。シーズンに入ったら、いったいどんなピッチングをするんだろうと思いながら打席に立ってました」
打者として対戦したときの強烈なインパクトがあるからこそ、牧は山本がチームメイトになったときに心強さを実感したという。WBCで山本の背中を見ながら二塁の守備についたときのことを、こう振り返る。
「味方として守っているときは、頼もしいですよね。由伸がマウンドにいるだけで、チーム全体に『今日は行ける』という空気が流れて、安心感がありましたよね。それが、由伸が放つオーラなんだと思いました」
グラウンドでの山本は、時に近寄りがたいほどの威厳を放っている。打者を冷徹に追い込み、150キロを超える速球と精密な変化球で翻弄する姿は、まさに「孤高のエース」そのものだ。牧も以前は、山本にある種の先入観を抱いていたという。
「正直、もっと尖っているのかなと思っていたんです。これだけ若くしてタイトルを総ナメにしているし、自分にも他人にも厳しくて、近寄りがたい雰囲気があるんじゃないかって。でも、実際に23年のWBCで一緒に過ごしてみたら、思ったより、ずっと〝普通〟の人でした(笑)」
二人の距離が急速に縮まったのは、このWBC期間中だった。いまや「黄金世代」とも称される98年生まれ組だが、このときの侍ジャパンのメンバーには牧、山本と宇田川優希の3人しかいなかった。自然と、気心の知れた同級生同士、行動をともにするようになったという。
「よく一緒にご飯を食べに行きました。そこで野球の話はもちろん、本当に他愛のない世間話もたくさんしました。気づいたら下の名前で呼び合うようになっていた。あんなにすごい選手なのに、威張るようなところがまったくない。それが同級生として、何よりうれしかったですね」
素顔の山本はどんな人物なのだろう?
「すごくフレンドリーです。自分から壁をつくるようなところがなくて、周りを巻き込んで会話を広げていく。いるだけで、その場の雰囲気が自然と和むんですよね。マウンドではあんなにすさまじいボールを投げているのに、ベンチに戻れば冗談を言い合える。そのギャップが由伸の魅力です」













