ひきこもっている家を訪ねてきたのは……

半年後に仕事が一段落。「ちょっと休む」ことにしたのだが、仕事を辞めると、そのまま家にひきこもってしまった。

片付けるのが面倒で何でもポイポイ投げていたら、床が見えなくなる。お風呂に入るのも面倒臭くなり、1週間近く入らないことも。

実は、園田さんが家にひきこもったのは2回目だ。

最初に勤めた相談室が閉まった後も、4か月間ほどひきこもった。ただ、そのときは次の仕事をオファーしてくれる人がいて、すんなり脱したのだが、2回目はより重症だった。

「せっかく支援職で頑張って、ここまで来たのに、もう仕事にも戻れない。人生が詰んじゃったと思って、何もする気が起きなくて……。

ひたすらネットでYouTube観てた。戦争物とか過去の処刑の方法とか。アニメも人を殺すようなもんばっか観て。鬱々として余計気持ちが沈んでいくけど、人生終わってしまったから、もういいやって」

(撮影/集英社オンライン)
(撮影/集英社オンライン)

ある日、部屋のドアが激しくガンガン叩かれ、ピンポンピンポンと何度も鳴らされた。やっとの思いでドアを開けると、かつて自分が支援した元ひきこもりの男性が立っていた。園田さんに電話をしてもメールをしても出ないので、家まで訪ねてきたのだ。

「そのまま車で熱海に連れて行かれて。大いに飲んで食べて、『泳ぐぞ』って無理やり泳がされたのも覚えている(笑)。

それから、少しずつ外に出られるようになったんです。自分じゃ、もうどうしようもなかった。彼に家まで来た理由を聞いたら、『お前が過去にやったことだ』と言われて、アッ!と」

その後、仕事を紹介してくれる人がいて、「働かなきゃ」という気持ちを持てた。1年後にまた別の人に声をかけもらい支援職に戻ることができた。今は大手企業で総合職として障害者のマネジメントなどをしている。

「要所要所で僕のために動いてくれた人がいるっていうのは、今考えても出来すぎだと思います。ただ、それまでの自分の行動と言動の積み重ねが、動いて支えてくれる人を作ったんだというのは間違いないと思う。

人間はお互いに生かされている。私にもできることがあることがわかった。だから、これからも支援職をやっていきたいと思っています。僕みたいな人間を1人でも減らしたいから」

台湾のコスプレイベントに参加した時の様子を報じた現地の記事を見せてくれた園田さん(撮影/集英社オンライン)
台湾のコスプレイベントに参加した時の様子を報じた現地の記事を見せてくれた園田さん(撮影/集英社オンライン)
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ずっと家族とは疎遠のままだったが、50歳を前に母親、義父、弟と和解した。支援職として得た知見を自分のために使い、家族関係を戻したのだという。

「コスプレで出会って1年近くお付き合いした人もいたんですよ。僕も結婚して自分の家族を作ってみたかったけど、もう手遅れだよね(笑)。弟には『うちの親は兄ちゃんに厳し過ぎた』と言われました。

母親に『昔のことだから責めないで』と言われると怒りに火が付いてケンカになるけどね。でも、電車に接触したとき浮かんだのは母親の顔だったんですよ。瀬戸際まで追い込まれたとき、一人でいいから頭に誰かの顔が浮かぶことが大切なんですね」

複雑な思いを抱えながらも、母親、義父、弟と新たな関係を築くのは楽しいのだろう。顔がほころんだ。

〈前編はこちら『「いじめ→家庭で孤立→“軟禁状態”」で幻視・幻聴…53歳男性の人生を変えたコスプレとの出会い』

取材・文/萩原絹代