ただの“女の子の部屋”がグッズ部屋になった理由

「温泉むすめのキャラ設定では、キャラたちが鳥居から鳥居をワープして、『お社渡り』で東京お台場の師範学校に通っています。そのため、ほりえや旅館前に鯖湖神社と鳥居があるので、飯坂真尋ちゃんがほりえや旅館に住んでいて、目の前の鳥居から学校に通ってるという体で部屋を製作。

最初はベッド、学生カバン、衣装(自作)、勉強机、それと女の子の部屋を意識して作っていました。お客様のチェックインに合わせて、香水をお部屋にかけたりもしていましたね」(和田さん、以下同)

つまり最初は、グッズを並べた部屋ではなく、「真尋ちゃんが実際に暮らしている女の子の部屋」を再現しようという発想だった。だが、その部屋はやがて別の進化を遂げていく。

「各スポットでは、ファンの方々が全国各地の温泉むすめグッズや声優さんのグッズを奉納して、祭壇が出来上がります。うちの旅館にもたくさんのグッズが奉納され、当初はロビーに置いていたのですが、置ききれなくなって真尋ちゃん部屋へ置いていき、いつしかこんな部屋になりました」

ほりえや旅館のロビーにもグッズがたくさん
ほりえや旅館のロビーにもグッズがたくさん

つまりこの部屋は、宿が意図的に作り込んだというよりも、ファンが持ち寄ったグッズによって“育っていった部屋”だったわけだ。

現在は天井にびっしりとマフラータオルが貼られ、寝転んでも温泉むすめと目が合う仕様に。布団を出してしまい、押し入れもグッズで埋め、アクリルキーホルダーは100円ショップで買った土台を使って、一つひとつ立てて並べているという。こうした手作業の積み重ねが、圧倒的な景色を作っている。

「ファンの方々は、全国各地のグッズを買っているので、やろうと思えば家でも出来るんですが、一人暮らしじゃないと、なかなかこんな思い切ったことは出来ないそうなんです。だから、こんな感じで飾り付けすると、これだけのグッズを飾れるよっていう、アドバイスみたいなこともしています。部屋に入ると、最初はみんな興奮しているけど、我が家のように落ち着くらしいですね」

2023年3月時点での「真尋ちゃん部屋」
2023年3月時点での「真尋ちゃん部屋」

真尋ちゃん部屋は、ただの“観光名所的な部屋”ではない。泊まった人が “推しに囲まれた生活”を擬似体験する部屋にもなっているのだ。

さらに、この部屋は旅館経営の面でも意味があった。もともとこの部屋は、子ども部屋の手前にあり、小さな子どもの足音が響きやすいため、稼働率が低かったという。