消えた17円「補助金は、消費者に直接届かない」

▼第二の闇:補助金は誰に届くのか

<ガソリン補助金3つの闇>「1リットル170円」のヤバすぎる内訳…年間1400億円“二重取り”と消えた17円…9兆円補助金は誰のために_2

ガソリン補助金の正式名称は「燃料油価格激変緩和対策事業」という。2022年1月の開始以来、繰り返し延長され、累計予算は今回の追加分を含めて9兆円前後に達する見通しだ。

単純に割れば年間2兆円規模。ちなみにガソリン税(揮発油税)の年間税収はちょうど約2兆円だ。同じ金額があれば、ガソリン税を丸ごとゼロにできた計算になる。減税であれば全額が確実に価格へ反映される。補助金は半分しか届かなかった。それはなぜか。

この補助金は、消費者に直接届かない。振込先はENEOSや出光興産、コスモ石油といった石油元売り企業だ。元売りが卸価格を引き下げ、その恩恵がガソリンスタンドを通じて消費者に届く、という「波及」の理論が建前だ。しかし現実は異なる。

2026年3月の補助金再開時、政府が設定した補助単価は1リットルあたり30.2円だった。この金額を投入すれば、店頭価格は約30円下がるはずだった。だが翌週の全国平均は13.1円しか下がらなかった。

差額の17円超はどこへ消えたのか。関東財務局がガソリンスタンド事業者155社にヒアリングしたところ、「補助金全額が価格抑制に反映されている」と答えた事業者はわずか45.2%にとどまった。会計検査院も同様の問題を正式に指摘している。

天下り先としての価値は格段に高まった

なぜ全額が反映されないのか。元売り各社は寡占市場の中で強力な価格決定権を持つ。補助金が卸価格に全額転嫁されなくても、外部からそれを強制する仕組みはない。9兆円は、検証も強制もできない仕組みの中に流れ込んでいる。

この補助金を管理するのが「一般社団法人全国石油協会」だ。経済産業省が2021年12月に公募し、わずか1週間の募集期間で採択された。事務局は博報堂が担い、その業務の77%を下請けに再委託した。

ガソリン価格が適正に下がっているかを調査するための費用として62億円が投じられたが、結果は非公表。会計検査院から「調査が価格抑制に寄与しているか全く分からない」と辛辣な警告を受けた。

全国石油協会の役員名簿を見ると、経産省、総務省、国税庁など複数省庁出身の国家公務員OB7人が名を連ねる。協会自身がHP上でその最終官職を公示している。

こうした天下り構造は補助金制度が始まる以前から存在していた。そこに年間2兆円の資金フローが加わり、天下り先としての価値は格段に高まった。