気になる「元カレ球団」が推し活のスパイスになる

ですが、乗り換えたあと、「元カレ」が気になっている皆さんも安心してください。

じつは、そうした(元カレへの)「ライバル視」が前向きなものであれば、ピア効果と呼ばれるプラスの効果をもたらすことも、研究でわかっているのです。

ピア効果の「ピア(Peer)」は、仲間や同僚、そして「ライバル」の意味。この効果を実験によって示した、米国の心理学者ノーマン・トリプレット氏は、いまから120年以上前の1898年、40人の子どもたちに対し、釣り竿のリールを改造した器具を使って、素早く糸を巻き取るゲームにトライさせました。

すると、一人でトライした子どもより、「仲間(ライバル)」と共に互いを意識しながらやった子のほうが、巻き取る速度が速くなり、作業効率が明らかにアップした、とのこと(Triplett, N., (1898),“The dynamogenic factors in pacemaking and competition.” The American Journal of Psychology, 9(4), pp.507–533)。

まさにこれが、ピア効果。トリプレット氏の実験は近年、「提示した被験者に偏りがあったのでは?」など一部から批判も浴びていますが、人はライバルと競うようにして頑張ることで、一人で同じ作業を行なうよりも高いパフォーマンスを挙げることが多い。この可能性は否定できないでしょう。

ライバルの存在が幸福感につながる?(写真/shutterstock)
ライバルの存在が幸福感につながる?(写真/shutterstock)
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スポーツ選手においても、よく言われますよね。ライバルのような存在がいたほうが、相手に負けまいとしていい成績を収める選手が多い、と。ただしその場合、ライバルに抱く感情は「ポジティブ」である必要がある。憎んだり妬んだりするのではなく、相手を意識しながらも前向きに競ってこそ、好結果がもたらされます。

野球の応援も同じでしょう。「絶対に負けたくない」とライバル視するチームがいてくれたほうが、より応援に熱が入るもの。ファンの球団の乗り換えを経験したTORACOたちもきっと、「元カレ(ジャイアンツほか)」を意識しながらタイガースを応援することで、より満足のいく応援パフォーマンスを挙げているはずです。

文/牛窪恵

『「幸福感」に満たされたいなら阪神ファンを知りましょう マーケッターが気づいた「効果と法則」』(集英社)
牛窪恵
『「幸福感」に満たされたいなら阪神ファン マーケッターが気づいた「効果と法則」』(集英社)
2026年3月5日
1,760円(税込)
224ページ
ISBN: 978-4-08-790234-1

【野球でなく「幸せ」に関する本です!】
★「おひとりさま」「草食系」など数々の流行語を世に広め、「ホンマでっか!?TV」ほかテレビのコメンテーターでもおなじみのマーケッター・牛窪恵さん。大学教授でMBAホルダーでもある著者が、推し活と行動経済学などの研究を経て導き出した「Well-being(幸福感)」に繋がるキーワード、それが「阪神ファンと熱狂」でした。
★みずからも熱狂的な阪神ファンで、毎年40試合前後を球場で観戦する著者だからこそ気づいた、彼らの体感的リアリティと行動心理の意外な関係。本書を読むことで、阪神ファン自身も気づいていない「幸福感」に繋がるヒントが、数多く得られるはずです。
★本書ではそうした実践的ヒントを、著名なマーケティング理論や女性ファン(TORACO)約3000人への調査・取材を通して独自分析し、わかりやすく展開します。

【効果と法則はこんなこと!】
■報酬の予測誤差=「ダメな子ほど可愛い」が喜びをもたらす
■プラシーボ効果=前向きな「思い込み」こそが幸運を呼ぶ
■ファンベース効果=「熱狂」こそが幸福度を高める
■サンクコスト効果=「今後も私(僕)がいなきゃ」が愛着を生む
■幸せの損益分岐点=「小さな幸せ」の積み重ねが、幸福度を高める
■PERMAモデル=「没頭」こそが、幸福持続の源泉に

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