誰かのために
本来であれば、同級生たちと同様、3月に高等工科学校を卒業し、4月からは晴れて自衛官になっているはずだった。
「卒業資格を得るには、体力試験に合格しなきゃいけなくて。今は片松葉杖で歩行をしている状態なので、合格することは難しい。……なので、あきらめました。
『なぜ、自分だけが?』とは思わないです。無駄なこと考えるのは嫌いなので。『じゃあ、次はどうしていこうか?』と考えるようにしています。だから、4月からは通信制の高校に通うことにしました。やっぱり『高校卒業資格』は欲しいので」
第1空挺団で活躍するという夢を追えなくなった今、ひゅうがさんの目標はどこにあるのだろう? しばし熟考し、こう答えてくれた。
「社会貢献っていうか、家族孝行をしたいです。正直、骨肉腫の治療費は高額療養費制度に加え、小児慢性特定疾病医療費助成制度でかなり助かっているんです。
僕が入院するときは小児科病棟なんですが、ちっちゃな子たちが抗がん剤治療をしていて、もちろん髪の毛がなくて。そんな子が本当にいっぱいいるんです。僕よりもずっと小さな子たちが一生懸命闘ってる。骨肉腫にならなかったら、やっぱりわからなかった世界だったと思います。
だから次の世代で闘病する子たちに、僕が何かをやっていけたらいいなという思いはあります。社長になって、たくさん稼いで、たくさん税金を納めればいいのかな? まだよくわからないですけど、誰かのためになれたら」
平和を守るための自衛隊になりたかった青年は、絶望の先で画面の向こう側の人に、懸命に闘う子どもたちために、発信を続ける。彼が紡ぎ出す言葉のひとつひとつには「誰かのために」という想いが込められていた。
今回は保護者同席の取材だったため、その時には口にしづらかった『家族孝行』について後日、ひゅうがさんからメッセージが届いた。
《家族へ》
がんになってから、家族の存在の大きさを改めて感じています。通院のたびに送り迎えをしてくれて、入院しているときも毎日のようにお見舞いに来てくれて、本当にありがとう。
家に帰ったときに美味しいご飯を作ってくれることも、何気ないことのようで、今はすごく支えになっています。
言葉ではなかなか伝えきれないけど、いつもそばで支えてくれていることに心から感謝しています。
これからも長い戦いになると思うけど、よろしくね。
取材・文/池谷百合子













