推しのキャラクターを見つけよう
──史進はこの時が魯智深との初対面なんですよね。史進の目の前に現れた魯智深は「巨漢の坊主」で「挙措に隙がない」(第一巻「曙光の章」天微の星)。旅から旅へ、いろいろなところに出没して、いろいろな人たちをつないでいく。面白いキャラクターですよね。
魯智深を演じている金児(憲史)さんが本当にぴったりなんですよ。スタジオで擦れ違ったとき、ああ、魯智深がいるって思いましたもん。人間が温かい。器のでかさとかが魯智深なんです、金児さん自身が。言葉の奥に隠れている何かを感じさせる、人としての奥行きをもともと持っている方だと思います。すばらしいキャスティングだなと思いましたね。
──二巻では、一巻に引き続き魯智深が生い立ちを語る場面がありますね。製塩所で働いていた父親が塩の横流しを疑われて首を刎ねられ、母がそれを嘆いて死に、孤児になったと。そういう生い立ちがあって、ああいう魯智深像が生まれたんだなと。
魯智深に限らず、原作には登場人物のバックボーンがしっかり書かれていますよね。「替天行道」の旗の下に集まってくる理由が全部見える。
台本を覚えながら、並行して原作を読んでいるので、台本、原作と行ったり来たりしているんですけど、どちらも読めば読むほど味わいが深まっていくような気がしますね。台本でさらっと書かれていることでも、原作にはその背景までが書かれているので、ああ、こういう意味なのかと腑に落ちることが多かったです。
僕の場合は史進ベースで読んでいるから余計にそう思います。ドラマでは描かれていないけれど、こういうことがあったんだ、と知ることで、史進の気持ちを想像して、演技に反映させることができる。読んでよかったなと思うことが多いですね。
──前回お好きだと言っていた医師の安道全と、元盗人の白勝は二巻ではどうでしたか。
やっぱりいいキャラクターですよね。とくに白勝がよかった。白勝は一巻で安道全、林冲と脱獄した時に、安道全から命にかかわる大手術を受けて生き延びたことををきっかけに人間が変わる。二巻では、白勝が自分で自分の変化を自覚しているところがよかったですね。
「安道全は、兄弟以上なんだ。林冲は、血を通い合わせた友だちなんだ。この二人のためなら、命はいらねえ。山寨にいるなら、俺も山寨に入りたい。そのために、みんなに信用される仕事をしなけりゃならねえんだ」
(北方謙三『水滸伝』第二巻「替天の章」集英社文庫 p.226)
林冲、安道全、白勝は、その関係がすばらしいなと思います。この濃いメンバーたちに埋もれないように、史進として自分の存在感を爆発させなくては、と思っています。ふわっと演じたら、ふわっと終わってしまうから、気をつけないと。
──一、二巻を読んで『水滸伝』の読み方のコツみたいなものは見つかりましたか。
推しのキャラクターを見つけることだと思います。ストーリーを追うだけだと、時代も国も違うこの世界にすぐには入り込みづらいと思うんですよ。僕の場合は史進を追いかけているので、史進はいまどこで何をしているんだろう? と思いながら読んでいくと臨場感があります。
だから、これから読もうと思っている方は、北方さんならではの表現で描かれている「漢(おとこ)」たちの中で好きなキャラクターを一人つくるといいですよ。二巻だったら安道全や白勝だったり、顔が真っ白な公孫勝であったり、そういう不思議なキャラクターたちを推しとして見ることで、この物語の中にすっと入っていけると思います。
聞き手・構成/タカザワケンジ
写真/矢吹健巳〈W〉 スタイリング/部坂尚吾(江東衣裳)
ヘアメイク/齊藤沙織 聞き手・構成/タカザワケンジ
北方謙三「大水滸伝」シリーズ公式サイト
https://lp.shueisha.co.jp/dai-suiko/














