エネルギーそのものを戦場に引き上げる意思表示
イラン人の友人に聞くと、少なくとも現場感覚としては米国サイドとの交渉など一切行われていないという。表で語られる「水面下の交渉」という言葉とは裏腹に、現実はもっと直線的で、生々しい。
その一方で市場はどうか。イスラエル筋の情報やトランプ大統領の発言ひとつで、原油価格も株価も乱高下している。この振れ幅こそが、いまの市場の正体だ。
そしてそのボラティリティを利用して、一部のヘッジファンドが莫大な利益を上げているという構図は、皮肉としか言いようがない。
現実では人命とインフラが削られている一方で、市場ではその「揺れ」自体が収益機会になる。このねじれは、現代の金融の縮図でもある。
さらにイラン側は、電力施設への攻撃が行われた場合、即座にイスラエルの9カ所のエネルギー施設を攻撃する準備をしていたという。これは単なる報復ではない。エネルギーそのものを戦場に引き上げる意思表示だ。戦争はもはや軍事だけでは完結しない。エネルギー、物流、通貨、そのすべてが戦場になる。
この文脈で見ると、金価格の下落は極めて象徴的だ。本来、金は「生産できない資産」であり、有事に最も強いはずの存在だった。
しかし現実には、中東各国がオイルマネーの流入停止に直面し、保有する金を市場に放出している可能性がある。安全資産が資金繰りのために売られる。この現象は、流動性がすべてに優先するという、もう一つの現実を示している。
だからこそ、下げた局面で金を拾うという発想は合理性を持つ。ただしそれは「安全だから買う」のではない。「流動性で売られているから買う」という逆張りの発想だ。
イランはこれまで18年にわたり蓄積してきたミサイルを使い果たし、今後はより高度な攻撃へ移行するという。戦争は次のフェーズに移りつつある。ウクライナとロシアの戦争、そして今回の衝突を見れば明らかなように、現代の戦争に勝者はいない。













