83歳で感じる人生に必要なものとは?
心ない発言にも「そうですかぁ」と受け流す。このやり取りを見ていた一流司会者がいた。前田武彦さんだ。
「あるとき、前田さんに驚かれました。『君は偉いねぇ、あんなにいじめられてもケロッとしているね』って。それで、“ケロっとした”“ロンパールームの先生”という意味で、“ケロンパ”と命名されたんです」
うつみさんを“ケロンパ”たらしめたのは、母親の言葉だろう。こんなエピソードもある。
「ある番組で、男性の先輩演者から『おう、うつみ、コーヒー買ってこい』なんて言われて。買ってきますよね。そうすると、それをほかの美人な共演者に渡すんですよ。しかも、こちらにはお金を返してくれないんです。
でも母が『悔しい、羨ましい、は勉強代になるから』と言っていたんですよね。私も雑な扱いをされることで、『自分は同じことを後輩にしてはいけない』と思えるようになったので、そのコーヒー代は勉強代ですね(笑)」
また、“ケロンパ”のマインドを維持できたのは、最期まで連れ添った夫・愛川欽也さんの存在も大きい。うつみさんにとって愛川さんは「常に前向きな言葉をかけてくれる人」。
2007年、うつみさんは韓国語の勉強に明け暮れ、韓ドラにも熱中した。ある番組のレギュラー出演中に3カ月間の韓国行きを申し出たが、番組スタッフからの反応は渋い。だが愛川さんだけは違ったという。
「相談したら、『偉いねぇ、まだ学びたいと思うなんて、本当に偉い』と言ってくれました。そのおかげで、私は韓国へ行くことができたんです」
うつみさんの“韓国好き”は一過性のものではない。むしろ年を重ねるごとに精力的になっているようにさえ感じる。つい2年ほど前にも、舞台を観るために韓国を訪問した。
「『ファントム』は圧巻でした。俳優のチョ・スンウに会うことができたのですが、メイクを落とすのに時間を要するため、仮面をつけての対面で……。横から素顔がちらっとでも見えないかな、なんて思ったのですが(笑)」
取材の最初にみた、いくつになっても快活で好奇心を突き詰められる健康的なうつみさんの笑顔がそこにあった。
うつみさんが挙げる、人生で“良かったこと”――大きな出来事として3つ。芸能人になれたこと、健康でいられたこと、そして愛川欽也さんと結婚できたこと。後編では、うつみ宮土理さんの目線から、愛川欽也さんの思考の足跡をたどる。
取材・文/黒島暁生 撮影/杉山慶伍














