1ドル160円は心理的な節目に過ぎない

イラン周辺の関係者の話では、現在ペルシャ湾周辺では中国向けの貨物船やタンカーの航行が優先的に認められているという情報も流れている。つまり中国向けのエネルギー輸送は確保されている可能性があるということだ。

もしこれが事実であれば、中国は中東情勢が不安定化する局面でもエネルギー供給の面で一定の安全弁を確保していることになる。世界がエネルギー不足を懸念する局面で、中国だけが比較的安定した供給を確保しているとすれば、それ自体が大きな地政学的優位になる。

その影響を日本は為替という形で受けている。円はすでに158円台後半から159円をうかがう水準にまで下落している。ここまで来れば160円は心理的な節目に過ぎない。

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もし中東情勢が長引けば、突破しても驚くことではないだろう。いまや円はアジアで最も通貨価値を棄損している通貨の一つだと言われることもある。

その円がさらに安くなるということは、値上がりした天然ガスをドル建てで買わされるという意味である。つまり日本はエネルギー価格の上昇と通貨安という二重の圧力を同時に受けることになる。

一方で現地の情報はまた違う現実を示している。イランの友人によれば、米国との話し合いでイラン側が望んでいる条件は三つだけだという。

第一に二度とイランを攻撃しないこと。第二にイラン周辺国の基地を使用しないこと。そして第三に今回の攻撃で破壊されたインフラへの補償。この三点だ。

衝突は短期間で終わる構造ではない可能性が高い

表面的にはシンプルな要求に見えるが、実際にはどれも簡単ではない。特に基地の問題と補償の問題は軍事と政治の双方を巻き込む。これから交渉が始まるとしても、どこを妥協点にするのか、そのせめぎ合いは相当に激しいものになるだろう。私はそう簡単に決着するとは思っていない。

そもそも今回の衝突は短期間で終わる構造ではない可能性が高い。イランは正面戦争で米国と戦う軍事構造ではなく、ドローン、ミサイル、そして地域の代理勢力を含めた非対称戦略を長年構築してきた。迎撃ミサイルは一発約5百万ドル以上とも言われる。

一方で攻撃側のドローンは約2万ドル規模とも言われる。防御側が圧倒的にコストを負担する構造だ。軍事力の絶対差とは別に、消耗戦という別の構図が存在している。市場が最も嫌うのは、この「終わりが見えない状態」である。