住民が減り続ける団地…自治会長が考えた最後の一手

そこで小山田団地の自治会長・惠濃政明さん(79)に要望を出すまでの経緯を尋ねてみた。

「この団地は19棟に計202戸ありますが113世帯(56%)しか入居していません。うち70世帯超は世帯主が65歳以上で、58世帯が一人暮らしです。65歳以上が地域人口の半分を超えると“限界集落”と呼ばれますがここはとっくにそれを超えています。

夫婦の入居は28世帯ありますが、ほとんどが後期高齢者で散歩もままならない人が多く、この3年間、毎年10人ずつ亡くなったり施設に入ったりして住民が減り続けています。

このままではあと数年で入居率が50%を割ることは確実で、自治会の運営にも支障をきたします。それを待ってるわけにはいきません。カネがかからない対策は何だろうと考え抜いた末に『ペットはどうだろう』と思いついたんです」(惠濃さん)

写真はイメージです(写真/PhotoAC)
写真はイメージです(写真/PhotoAC)

2023年に自治会長になった惠濃さんは、他の役員や別の自治会関係者ともペット同居の可能性を話し合ったという。賛同する人は多かったが「そうしたいけど県はなかなか許可しないだろう」との声も出たという。

「そこで24年11月に小山田団地の入居者にアンケートをしました。すると8割が賛成してくれました。

『(世帯が減って)子ども会も解散し、赤ちゃんの泣き声も聞こえず寂しい』という声や、『自分は高齢で(ペットを)養うことはできないが、養う人が入ってきてくれるのはウェルカムだ』という声もありました。

その声を携えて去年6月に要望書を出すと、県に受け取ってもらえたんです」(惠濃さん)

「ペット飼育可」になった県営小山田団地の代表的な間取り(写真/熊本県営住宅管理センターのホームページより)
「ペット飼育可」になった県営小山田団地の代表的な間取り(写真/熊本県営住宅管理センターのホームページより)

そこから県と自治会の協議が始まり、県は改めて入居者の考えを確認。その結果、①全世帯がペット飼育可とすることに賛成し、②動物アレルギーなどの疾患のある入居者がおらず、③ペット飼育を希望する入居者がいる――という3条件がそろった棟で試験的にペット同居を認めることを決めた。

この3条件を備えたのが19棟の中の3棟(計24部屋)で、10ある空室のうち修繕中の2部屋をのぞく8部屋の入居募集をかけると一瞬で埋まったというわけだ。

県営小山田団地の代表的な部屋の写真(写真/熊本県営住宅管理センターのホームページより)
県営小山田団地の代表的な部屋の写真(写真/熊本県営住宅管理センターのホームページより)

「狂犬病の予防注射やマイクロチップの装着を飼い主に求めたりする内容の県の要綱を新たにつくり、自治会もペット飼育の規則を新設しました。また飼い主は『ペットクラブ』に入り、その会則も守らなければなりません。

こうした新たなルールづくりとともに住民説明会も行ない、試行対象の3棟の住民からはペット飼育者が入居することへの同意もいただきました。今後1年くらい試行期間を設け、見えてきた課題を研究します」(県住宅課)