職人を世界の「SHOKUNIN」に!

塚原 今日、菱田さんとこれだけは話したかったというテーマがあるんです。それは「大工アーティスト」という表現にも関わるお話です。菱田さんがおっしゃっていたことの中で一番印象に残っているのが、「大工は職業じゃなくて生きざまなんです」という言葉です。

今、ワーク・ライフ・バランスとか言われていますけど、職業としての大工ではなく、暮らしと地続きの、生きざまとしての大工が大事であるというお話をされていたときに、なるほどなと思ったんですよね。

最近、海外の人たちから「アーティストとクラフトマンとアルチザンの違いは何だ?」と聞かれて、もっと言えば、それらと「職人」の違いは何なんだみたいな話をされて、うまく答えられなくて悔しかったんです。悔しくて、僕なりに何なんだろうというのをChatGPTとやり取りしながら考えてたんですけど。(笑)

ひとつは、先ほど菱田さんがおっしゃっていた角度で、クラフトマンシップは課題解決で、アーティストは問題提起という側面もあると思うんですけど、他の側面でいうと、しごとに対する考え方が違うと思ったんです。

特に私がいたアメリカをはじめとした西欧諸国では、「ワークライフバランス」という言葉に代表されるように、しごとと暮らしが分けて考えられます。工藝の世界では「しごとが暮らしで、暮らしがしごと」、要するに「ワークライフブレンド」というふうに捉える。

だから、職人さんというものは、アーティストとかクラフトマンとかアルチザンとかの外来語に直すのではなく、「SHOKUNIN」として世界に出して、その背景に宿る日本人の姿勢を広めたほうがいいんじゃないかと思っています。

今、「生きがい」という日本の言葉が海外に広まって、「IKIGAI」というタイトルのついた何冊もの本が、すさまじい数で売れているんです。そのように世界中の人が、日本の「生きがい」という言葉を知っていっている状況で、失礼ながら、菱田さんの「大工アーティスト」という表現も、世界に通じる適切な表現がなかった結果、そこに行き着いたのかなと憶測しているところがあります。

職人というものが「SHOKUNIN」という世界語になって、正しくみんなが理解してくれれば、この現代社会でも「職人」という伝統的な職業、そして菱田さんのような生きざまが認知されていくのではないかと思っているんです。

構成/高山リョウ 撮影/菱田桔平

なぜ日本の手しごとが世界を変えるのか 経年美化の思想
塚原 龍雲
なぜ日本の手しごとが世界を変えるのか 経年美化の思想
2025年11月17日発売
990円(税込)
新書判/208ページ
ISBN: 978-4-08-721388-1

隈研吾氏(建築家)推薦!
「職人の手が紡ぐ時間と若い起業家のまなざしが交差する。
伝統と革新が響き合う、手しごと再生の書」

◆内容紹介◆
柳宗悦が民藝運動を提唱して百年。いま、その精神にZ世代の起業家が共鳴し、新たな光を当てる。
「経年美化」──時の流れが育む美しさに惹かれ、日本各地の工房を旅し、職人と火や木や土の声を聴くうちに、その意味は生きた実感となった。
伝統工藝は過去の遺産ではなく、持続可能な社会を築く知恵。モノを愛する心が人を結び、手しごとは世界を変える。そのメッセージは海外でも静かな共感を呼んでいる。工藝から未来を紡ぐ挑戦の書。

◆目次◆
第一章 Z世代、工藝に出合う
第二章 工藝から学んだ、これからの生き方・働き方
第三章 知られざる工藝の世界
第四章 これからの日本の工藝をつくる職人たち
第五章 日本の手しごとの「いま・これから」

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