大工アーティストが開く工藝の可能性
やがて菱田さんは、欧州での「コミュニティ」や「家造り」への向き合い方が、日本のそれと通じることに気づいたという。そこから、旅先で学んだ木骨造の角ログ住宅工法・ティンバーフレームと、日本で古民家などを造るときの伝統工法を融合させた、彼独自の建築意匠が生まれた。日本の伝統的工法を使いつつ、どこかヨーロッパの香りもするデザインや機能美がその魅力だ。その根底にあるのは、日欧共通の自然への敬意や、素材への向き合い方、およびそこから生まれる技術だ。(『なぜ日本の手しごとが世界を変えるのか 経年美化の思想』塚原龍雲・集英社新書より)
菱田 私は建築のしごとをしていますが、塚原さんが出された「工藝」をテーマにした本で紹介していただいていることを非常に嬉しく思います。塚原さんがハブとなり、私もいろんな伝統工芸の職人さんにお会いしてきました。
皆さん、私と同年代の40代から50代か、さらにベテランのスペシャルな方ばかりですが、その方たちがみんな塚原さんのことを尊重、尊敬して、同じ目線で向き合っている。そのことを私自身、不思議に思っている節もありました。職人って「ものづくりの人間」なので、その人が敬意を払う相手ってやっぱり自分に近い人たちで、私たち大工だと、大工の言葉しか聞かないようなところがあるんです。
そんななかで塚原さんは、20代の若さで40〜50代以上の職人たちと同じ目線で会話をしていた。私も塚原さんと話せば話すほど、その人柄に深みを感じるようになり、塚原さんが人生をかけて学びきって、歩きまくって得た知識や経験に大きな感銘を受けました。その感覚は今回の本にも詰まっていると思います。こういう方が新しい時代を切り開いてくれるのではないかと期待しています。
塚原 今のお言葉を受けて、恐縮ですとしか言えないですけれども、菱田さんと、菱田さんの会社である菱田工務店で働かれている方々と一緒に、北陸から関西まで工藝の職人さんのしごと場を回らせていただいたんですよね。これまで工藝というものは建築の中にあまり入ってきていなかったのですが、それってよくよく考えてみたらおかしいなと思って。
今回の本にも出てくる富山県・高岡銅器の折井宏司さんの工房にも、一緒に行かせていただきました。菱田さんが今、軽井沢で手がけていらっしゃる物件にも折井さんの技術が取り入れられているのですが、工藝の職人さんと大工さんが知り合ったことで、工藝側の可能性が大きく開かれたのだと思います。
ほかにも菱田さんが工藝の職人さんたちの技術に触れたことによって、彼らの技術のポテンシャルが解放されたり、両者が化学反応を起こすようなところもありました。菱田さんにも新しいものに触れていただきながら、我々の会社KASASAGIも勉強させていただいています。
僕が伝統工藝の職人さんたちにリスペクトしていただいているというのは大変恐縮なんですけれども、あくまで菱田さんみたいなすばらしい方をお連れさせていただいて、何か物事が始まって、それが成果になったりしていく中で、「塚原が連れて来る人は変な奴じゃないぞ」というところを御了解いただいているのかなと思います。僕の実力というより、職人さんたちのすばらしさなのだと思います。















